(濃い愛。つまりバカップルの話)









私は鶴ちゃんに抱きつくことが好きだ。
真正面からぎゅっと抱きついて、腕を彼の細い腰に回すと、彼は決まって身を捩りながら恥ずかしそうに言葉になっていない言葉を洩らす。だけど最後は彼からも、戸惑いがちに私の腰に腕を回してくれるの。ああ、もう!本当に可愛い!

私はやわやわと彼の頭を撫でて、ぴょんっと出たピッグテールを弄る。


「何やってるんですか…」
「ん、可愛いなぁ…と思って」
「可愛いなんて…嬉しくありません」


またまた在り来たりな返し。鶴ちゃんはきっとこの後、私に「でもかっこいいけどね」とか「可愛いけど…かっこいいよ」などと言って欲しいんだと思う。鶴ちゃんは人の言葉で自信がつくタイプだから。実際、私は鶴ちゃんのことかっこいいし可愛いって思ってるから、別に言っても良いんだけどね。


「うん、そうだね。鶴ちゃんはかっこいい」
「っ…!」


そう言うと、私を抱きしめる腕の力が強くなった。もう、そういうところが可愛いんだよ。鶴ちゃん可愛いなぁ。
鶴ちゃんは私より身長が高いので、彼の胸辺りに抱きついて彼を見ると、自然と上目遣いになる。甘えるように寄り添い、鶴ちゃん…と甘えた声で彼を呼ぶ。


「…なんですか?」
「すき」
「……ううっ…」
「なんで呻くの?」
「…だって、恥ずかしいじゃないですかぁ…っ」
「私たち以外誰もいないよ?」
「それ、でもっ…!」
「鶴ちゃんは…私とこうするの、いや?」


私は性格が悪い。
鶴ちゃんは私とこうしていちゃいちゃするのが大好きだ。ただ、すごく恥ずかしがり屋さんだから、素直になれないんだ。ああ、可愛いなぁ。
でも、たまには彼から求められたいな。

私の質問にどう答えようかと、必死に言葉を探している鶴ちゃんから離れると、彼はすごく残念そうな顔で私を見た。


「名前…?」
「…そう、だよね…。こんなにベタベタされたら、嫌…だよね」
「ち、ちがっ…!」
「私…鶴ちゃんに嫌われたかな…?」

わざと俯きながら、わざとスカートをぎゅっと握り締めると、鶴ちゃんが上から覆いかぶさるように抱きしめてくれる。
支えきれなくてそのまま後ろへダイブ。ボフンと私の身体はソファの上に転がった。

耳元で、鶴ちゃんのうめき声が聞こえる。



「鶴ちゃ…」
「そんなわけ…」
「…え?」
「そんなわけ、ないですよ!…っ、ううっ…っ、いや、じゃないんです。…あなたに触られるのも、触るのも、嫌なわけなくて…寧ろ好きというか、…あ、こ、これはその、いやらしい意味では決してなくて…その、…っ…ん」


ああ、鶴ちゃんが可愛すぎてその甘いピンク色の唇を塞いでしまった。
やわやわと自分の唇で挟みながら堪能する。ああ、鶴ちゃん…鶴ちゃん…

私が口付けをすると、最初こそ驚いていた彼だったが、すぐに私の頬に手を添えて、それから深く口付けを始める。…普段は可愛いけど、こういうところに男らしさを感じるんだよなぁ…。
鶴ちゃんからのうっとりするような口付けに応えていると、そっと唇が離される。



「っ…、名前…っ」
「鶴ちゃん…」
「俺も、好き…です」


熱を持った視線で射抜かれて、私はまた彼に落ちた。




20120220


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