速水鶴正くんと、キスしたい。










その思いは、彼と付き合いだして…彼と手を繋いで…彼に抱きしめてもらって…彼との恋を重ねるごとに段々と強くなっていく。
だけど速水くんはちょっぴり恥ずかしがり屋さんで、付き合うのだって手を繋ぐのだって抱きしめてもらうのだって、大分時間もかかったし勇気もいったことだろう。

…でも…。
私は隣を歩く速水くんの横顔をチラリと見る。ああ、やっぱり可愛い。そしてかっこいい。
彼の全てが好きだ。黒目がちな瞳も、大きくて白い特徴的なメガネも、綺麗なその横顔も、頭の上で揺れるピッグテールも、色んな動きをする眉毛も、声も、不安げな表情もたまに見せるキリっとした表情も、意外と大きな手のひらも、優しく笑いかけてくれる笑顔も…全部、全部全部大好き。大切。


私はこんなに速水くんのことが好きだ。だからこそ、私は…彼に同じように愛されたいのだ。彼からの愛を確認したいのだ。
行為だけが愛情表現の全てとは言わない。だけど、キスへの憧れは強い。女の子なら、そういうものでしょ?
だって結婚式の時にもキスをするんだよ。誓いのキス。神聖な、男女の行為。すっごく、綺麗なことだと思わない?憧れることだと思わない?


私が世界で一番大好きな速水くんと、キスをしたいのは、おかしくないでしょ?






優しく繋がれた手に少しだけ力を入れると、ピクンっと彼が跳ねた。
それから恐る恐るといったかんじで私のほうを見てくる速水くん。かわいい。


「どうか、しましたか?」
「あのね速水くん」
「は、はい…」


どもりながらも私の話を聞くために耳をすませてくれた速水くんをもっと大好きになってから、私は胸の内に秘めていた思いを彼に伝えることにした。


「キス、したいなぁ」
「…え?」
「…キス、したい」
「誰が、誰と…ですか?」


いやだなぁ、速水くんは冗談がヘタクソなんだから。分かってるのに、聞き返さないでほしい。現に速水くんの顔は真っ赤だし、繋いでる手もカタカタと震えてる。
私がムッとした表情をすると、速水くんはオロオロと表情を崩して、それから立ち止まった。



「えっと…あ、あの…」
「……」
「ううっ…、苗字さん」
「なあに?」
「お、俺…」


そこまで言って言葉を切る速水くん。彼の顔は少しだけとろんとしていて、私の期待は高まるばかり。


「俺、も…したかったです」
「過去形?」
「ちがっ…違います、…現在形です」
「っぷ、あははっ…何その返し」
「し、仕方ないじゃないですか!俺、焦ってるんですよ!苗字さんがいきなり…!」
「いきなり?」
「うっ…、…も、もう知りませんからね!」


何が知りませんなの?そう聞こうと思ったけど、その言葉は速水くんの唇によって遮られた。
カサカサ。それが速水くんの唇に対しての第一印象。…でも、何だか満たされていく。気持ちいい。

お互いの唾液で唇の表面が濡れてくる頃、私たちは唇を離した。肩で息をする速水くん、顔はたこのように真っ赤。可愛い。でもなんだか大人っぽくて色っぽくてかっこいい。




「速水くんかわいい、かっこいい」
「…どっちですか」
「どっちも。つまり好き」
「…、恥ずかしい…」






20100110




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