苗字に拒絶されてしまった。…仕方のないことだ。
俺は自分の感情だけで動きすぎた。その結果が…これだ。

初めて見た苗字の涙は、俺の胸に重い何かを落とした。一番大切にしなければならない彼女。…そんな彼女を傷つけたのは、他でもない俺自身だ。


「くそっ…」


もう、頭の中は無茶苦茶だった。
一人になってしまったことへの不安、そして後悔。どうしようもない事への苛立ち、恐怖。…苗字への申し訳のない気持ち。

…幻影学園から出た俺の脚は無意識に、昔天城たちと遊んだ公園へと向かっていた。
















衣服を整えた私は一人、教室の自分の席に伏していた。
傘も持ってきていないから帰ることもできず、ただ一人薄暗い教室で泣き続けるしかなかった。


…最後に見た真帆路くんの表情は、とても悲しそうだった。
私は分からない。今まで何も言わずに行為を進めていたのは、他でもない…真帆路くんなのに。なのに、なんであんなにアッサリ止めてくれたんだろう?…やっぱり、遊びでしかなかったから、かな?…でも、じゃあなんで最後にタオルをかけてくれたの?なんで、申し訳なさそうな顔で私のほうを見てきたの?



「わかんないよ…、わかんない…」



真帆路くんが何をしたいか、わかんないよ…



すると教室のドアがガラリと開いた。
教室の中に入ってきたのは、真帆路くんの幼なじみの…香坂さんだった。















あの公園で、天城に会った。
天城は変わった。だけどあの頃から変わることができなかった俺は、天城が羨ましくて、妬ましくてたまらなかった。

俺は天城のことを「現実を受け止めることの出来ない臆病者」と称したが、どちらが臆病者か。
サッカーのことも苗字のこともどちらも受け止めることが出来ず、嘆いてばかりの臆病者。だけど、それを認めたくなかった。自分が弱いと思いたくなかった。




「苗字…っ」



助けてくれ。俺は一体、どうしたらいい?
…お前に助けを請うなんて、おこがましいにも程があるが…。だけど…俺の心の支えになってくれたのは、いつもお前だった。




「たとえば君が、傷ついて…くじけそうに、なった時は…」



BELIEVE、…苗字がコンクールで歌った曲だ。
苗字の歌を聴いてから、俺はこの歌が大好きになった。苛められて苦しい時、いつもこの歌を歌っていた。




「かならずぼくが そばにいて ささえてあげるよ そのかたを」



苗字の歌声が蘇える。
…ああ、苗字。…俺は、俺は…




20120212



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