1年生の頃から、青山俊介くんのことが好きだった。

同じクラスだったから制服姿で勉強をする青山くん、同じ部活だったからユニフォーム姿でサッカーする青山くん、何かの打ち上げの時や遊びに行った時に見る私服姿の青山くん、目が合えば笑いかけてくれる青山くん、勉強を教えてくれた青山くん、色んな青山くんを私は知っている。知れば知るほど好きになって、好きが大好きに変わって、想いは膨らんでいくばかりだった。


だけど、青山くんは2年の始めに部活を辞めてしまった。
2年生でも同じクラスだったけど、彼が辞めてから笑顔を見ることができなくなった。目が合うことも無くなった。声だって、毎日聞いていたのに、聞こえなくなってしまった。
私はサッカー部を辞める事ができなかった。本当は、辞めたかった。フィフスセクターは怖かったし、何より青山くんがいない。新入生も怖かったし、わけが分からなかった。だけど、私がここで辞めたら誰がマネージャーをやるの?中途半端にはできない。残って頑張る人もいるんだ。…そう思って、私は部活を辞めなかったけど。…辞めなかったけど…青山くんがいないという事実はどうやっても私の心に影を落とした。






そんなある日、青山くんが一乃くんと共にサッカー部へ戻ってきた。嬉しかった。嬉しかったはずなのに、みんなのように彼らに、彼に駆け寄ることができない。みんなとの挨拶を終えた青山くんが私に気づいて近寄ってくる。「苗字」優しい声で、聞きたかったあの声で、私の名前を呼んでくれる。だけど、私はそれを無視して逃げるようにサッカー塔へ走った。





嬉しい反面、恐ろしかったのだ。青山くんに、どう接すれば良いのか分からなかった。好きすぎて、悲しすぎて、心の中がぐしゃぐしゃで。一人部室の椅子に座って泣いていると、ドアが開いて誰かがやってきた。


「ここに、いたのか」

息も切れ切れ、きっと走って私を追いかけてくれたのだろう。青山くんが肩を揺らしながら私の隣にやってきて、私と同じように座った。今回は逃げようとは思わなかった。ただ、緊張して身体が硬直している。


「苗字」

青山くんが名前を呼んでくれる。きっと彼は私のほうを見ているんだろう。だけど私は青山くんを見ることができない。


「そのままで、いいから…聞いて」


心なしか、青山くんの声が震えているような気がした。




「まず…、勝手に出て行って…ごめん」
「……」
「それと、いきなり帰ってきてごめん。自分でも、都合がいい奴だってわかってる。…だから、謝らせてくれ。ごめん」
「……」

静かな部室に、青山くんの声が響く。青山くんが謝ることなんてないのに、そう言いたくても口から漏れるのは嗚咽ばかり。ああ、何か言わないと。せっかくここまで追いかけてきてくれたのに。何か、何か何か…言わないと。そう思って、口から飛び出したのは、



「好き」



二文字だった。



無意識に発してしまった言葉に、私自身驚きを隠せない。だけど、唐突に言われた青山くんはもっと驚いているだろう。
彼の顔を見ると、やはり予想通り。とても驚いていた。ああ、どうしよう。ここで変に言い訳しても駄目だよね…。じゃあ、もういっそのこと…全てを打ち明けてしまおう。



「好き、なのっ…。ずっと青山くんのことが、好きだった。…だから、全然話せなくなって、悲しくて、…でも、戻ってきて。…嬉しいんだよ?嬉しいんだけど、でも恥ずかしくて、どうしたら良いかわかんなくて、逃げちゃって、…ごめんなさい!」


そう一気に捲くし立てると、この空間から一刻も早く逃げたくなって立ち上がる。ああ、今自分が何言ってるか全然わからなかった…!ううっ、恥ずかしい!そう思って足を動かした瞬間に、座っていた青山くんが私の手を引っ張る。当然抵抗できなくて、私は青山くんの上に崩れ落ちた。



「ぅ、あ、青山くんっ」
「…苗字」
「ぅあ、うう…」
「先に謝らせて、ごめん」
「え、青山くんっ…ん」


早口で謝った青山くんの唇が私の唇に触れる。柔らかい感触が、一瞬何だか分からなかったのだが、それが何なのか理解した後すぐに顔が熱くなっていくのを感じた。私、今青山くんとキスしてる…

離れる唇。至近距離にある青山くんの顔は真っ赤で、こっちもさらに顔が熱くなる。



「ごめん、苗字。俺も、好き」
「青山くん…」
「寂しい思い、させてたよな。…本当にごめん」
「…謝らないで…」


寂しそうに顔を歪める青山くんの頬に触れると、彼は私のほうをきょとんと見て少しだけ笑ってくれた。



「待っていてくれて、ありがとう。…ただいま」
「…お帰りなさい」



ぎゅっと青山くんが私を抱きしめてくれる。ふわりと、心が温かくなった。青山くんという光が、影を取り払ってくれる。
青山くんがいないと、私は何もできない。依存している。…だけど、それが心地よい。

青山くんのぬくもりに包まれながら、私は一身に幸せを感じた。








**
来週の青山サンおめでとう。私の中の青山スキ!って心を全て注いで書きました。依存症みたいな話になりました。青山サンスキです。



20120105




人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -