(年齢操作/南沢夢主共に大人で結婚してます)







昨日は篤志と、頑張って作ったおせちとテキトウに作った年越しそばを食べながら紅白を見た。それからチャンネルを変えてアイドルのコンサート番組を見る。篤志は年越しは行く年来る年見ながらだろ普通とか言ってたけど、どうせなら賑やかに迎えたいよねってなわけでチャンネルは譲らなかった。「ハッピーニューイヤー!」テレビの楽しげな声とともに新年を迎えて、挨拶を交わしてそのまま二人でコタツで爆睡。起きたのは朝の8時で、お正月らしいぐだぐだ生放送の番組を見つつお雑煮を食べる。うん、我ながら美味しいぞ。


「神社行くぞ神社。混むからさっさと仕度して来い」
「あ、じゃあ去年買った破魔矢とか御守りとか持っていかないとね」
「もう玄関に置いてる」
「さっすが!」
「ほら、さっさと行った行った」
「はーい。…あ」
「なんだ?」
「篤志お年玉ちょーだい」
「餓鬼」




そんなこんなで電車に揺られながら、マイホームから一時間ほど離れた大きな神社へ向かう。
もちろん人は多くて、油断していたら人の波に流されちゃいそうだ。篤志がさり気なく手を差し出してくれたので、遠慮なく握っちゃおう。

神社でお参りをして、破魔矢を神社に預けて、それから二人で七福神おみくじを引く。えーっと、中吉で…七福神は…


「ことぶきろうじん?」
「ばーか、寿老人だ、じゅ・ろう・じん」
「あはは〜、漢字苦手なんだよー。篤志は?」
「布袋尊。平和安穏家庭隆盛。ちなみに寿老人は病の平癒に長寿延命な」
「へぇ〜、じゃあ今年の南沢家は平和だよってことで良いのかな?」
「まあ別に良いんじゃねぇの?」

ふっと笑った篤志は、そのまま近くの木の枝におみくじを括りつける。私もそれに倣って彼が括りつけた隣におみくじを括った。
そして今年の破魔矢や御守りを買うために可愛らしい巫女さんたちがいる販売所まで向かう。破魔矢と家内安全の御守りを買っていると、篤志がなにやらコソコソと巫女さんから何かを受け取っていた。…ん?


「篤志何買ったの?」
「あー…、まあな」

何故かはぐらかす篤志に、私の頭の上には疑問符が浮かぶ。神社だから如何わしい物ってわけじゃないと思うけど…気になるなぁ。
まあ後で分かるさ、と言われたのでその場は収まったけど…。うーん、何なんだろ?





それから二人で神社の近くをグルグル。お正月なので、出店もたくさんあった。
そろそろお昼時。てきとうに出店で何かを買って昼食済ませることになったので、私たちはお店の前をぐるぐる。結局私はフライドポテト、篤志はさつまいもスティックを買った。

今日の夜は篤志の実家でお義父さんたちとしゃぶしゃぶを食べる予定だから、軽めに済ませようと思ってたからちょうどよかった。
…大きな塩辛いフライドポテトをつまんだ時だった。視界の端に、あるモノが映る。


「あ」
「ん、どうした?」
「射的がある」
「ああ…あれか」


射撃の出店を見つけて、なんだか懐かしくなって駆け寄った。おじちゃんが「いらっしゃい」と元気に声をかけてくれる。
ああ、本当に懐かしい。ねえ、篤志は覚えてる?私たちの最初のデート。商店街のお祭りに中学三年の頃行って、そこで射撃をやったこと。

そう問いかけると、篤志は少しだけ苦い顔をした。


「ああ、覚えてるさ。1000円も貢いだのに、サクマドロップ一つしか取れなかったよな」
「それを二人で花火見ながら悲しく食べたんだよね」
「名前がハッカ嫌いで、俺ハッカばっか押し付けられてたよな」
「ハッカは私の敵だ」
「ふっ、何だよそれ」

並ぶ景品を見ると、最新のゲーム機やアイドルの写真…たくさんのものが一定の間隔で置かれてある。その中に、思い出深い缶を見つけた。あ、篤志…あるよ!そう声をかける前に篤志はおじさんから射的の銃を受け取っていた。


「商品、ゲームとかあるけど、何がいい?」
「…思い出の品」
「…了解」


篤志はフッと笑うと、サクマドロップに照準を合わせた。








中学三年の時から篤志の射的の腕は全く成長してなくて、結局ドロップを取るために1200円もかかってしまった。成長するどころか退化している。…だけど、おじさんから受け取ったドロップ缶を見て、私たちは共に笑いあった。

それからまた電車に揺られて家へと戻る。…あ、そういえば。



「神社で、何買ってたの?」
「ああ…あれか…あー…」
「どうしたの?」

篤志が何だか言いにくそうに言葉を濁したので、もう一度聞いて見ると彼は観念したようにコートのポケットから小さな包みを取り出し、それを私に差し出してきた。


「それ、やるよ」
「なにこれ?」
「…開けてみろ」
「うん…」


セロハンテープで留められている箇所を離し、それからゆっくりと袋を開ける。中にあったのは御守りだった。…しかも…



「安産祈願…?」
「そろそろ、」
「…」
「そろそろ、良いだろ?」



そう、俯きながら言う篤志の頬は少しだけ赤くて、なんだかそれが可愛くて嬉しくて、彼の冷たい手の上に自分の冷たい手のひらをかぶせた。






A Happy New Year 2012
今年がみなさまにとって幸せな一年になりますように!




20120101


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