私の日課は倉間とメールをする事だ。
その日あった他愛の無い日常のことを語り合ったり、時にはお互いの愚痴を聞きあったり、時には討論をしたり、宿題を教えあったり、ただの伝達だったりもする。
だけど、女の子の友達より上回る回数をやり取りしており、自分でも何故こんなにやり取りしあうようになったのか分からないくらい、私たちは毎日メールを送りあっていた。

私は倉間のことが好きだ。だけど今の関係も好きだ。
この関係が心地よいので、壊したくない。だから怖くて告白もできない。だけど私はそれで良いと思っていた。…あの日までは。





掃除当番の日。私はじゃんけんで負けて焼却炉までゴミを捨てに来ていた。面倒くさいと思いつつ、担任が怖いのできちんと任された仕事をこなしていると、目的地である焼却炉のほうから声が聞こえてきた。


「ずっと好きだったの!」


可愛らしい女の子の声が響く。ああ、これは…。……口元がニヤける。これは告白というやつですねぇ。
ニヤニヤ。他人事なのでとても楽しい。さてさて結果はどうなるでしょうか〜なんて面白半分で焼却炉のほうを見ると…。



「…え」


告白を受けていたのは倉間だった。
予想していなかった事態に、頭が混乱する。手に力が入らなくなってしまい、ゴミ袋が地面へ落ちてしまう。その音を聞いた女の子が少しだけ戸惑ったように声をあげた。だけど、だけど、だけど…私の頭は混乱する。と、とにかくここにいちゃ駄目だ…。私は落としてしまったゴミ袋もそのままに、その場から逃げ出した。












家に帰ってからも考えるのは焼却炉での出来事だけ。
あの後のことは分からない。倉間は結局、告白を受けたのだろうか?もし受けていたら、どうしよう。
私の恋も終わるし、メールのやりとりも終わってしまうかもしれない。考えれば考えるほど気分が落ち込んでいく。もう何度目か分からない溜息をついたときだった。

軽快なポップスが私の部屋に響き渡る。倉間専用の着メロだった。私は急いで携帯を手に取り、メールを見る。
内容は、いつものように今日あった出来事を知らせるものだった。当然、告白されたことは書いていない。なんだかホッとして、私は倉間に返信するためにボタンを押した。


…でも、

もし、もしだ。考えたくないけどあの女の子と倉間が付き合うことになってたら?ただの友達としか思われていなかったから、彼女が出来てもいつも通りメールをしてきたのでは?…ネガティブな考えがぐるぐると頭の中を渦巻く。
そりゃあネガティブにもなるよ。…告白していた女の子、可愛かったし。前に面白半分で聞いた倉間の好みのタイプ(可愛くて俺より小さくて守ってやりたくなるような女)そのままだったもん。


いつもは嬉しい倉間からのメール。だけど、今は見てるだけで苦しくなってくるそれ。
涙で視界が歪む。好き、好き。倉間、好きなんだよぉ…。もっと早く行動を起こせばよかった。怖いなんて、思わなければ、こんなことにはならなかったかもしれない。
震える指で、スマートフォンを操作する。



【すき】



倉間に伝えることが出来ない想いを、携帯に打ち込む。そして、そのまま私は眠りについた。












朝。携帯を見る気にもならず、私は支度をして学校に向かう。
すると、校門の前で見知った…でも今は会いたくない彼の姿が目に入った。


「っ、苗字!」
「…く、らま、お、おはよう!」

いつも通りだ。いつも通りにしていれば大丈夫。そう思って、笑顔で倉間に接する。すると倉間が訝しげに顔を顰めた。


「おはようって…お前…」
「…え?」
「…昨日の、メール」
「へ?」
「何で返さねぇんだよ」


ふて腐れたように言う倉間。ああ、そういえば昨日のメールに返信していなかった。
ごめんごめん、寝ちゃってて。今日はちゃんと返信するよ。と笑いながら言うと、「はぁ?」と睨まれてしまった。…え、…え?


「お前、何言ってんだよ。自分のメールの内容、忘れたのか?」
「…え…自分のメール…?」
「っ、これだよコレ!」


ズイっと倉間が自分の携帯の画面を私に見せてくる。その文面を見るのと同時に、私は自分の顔から火が出そうになった。






【すき】





まさかと思って自分の携帯を確認すると、昨日打ったメールの上に送信済みの文字。も、もしかして…あれ、送っちゃってたの?(しかも倉間からのメールが数件、着信まである。うううう…ごめんなさい)
私の携帯はスマートフォンだから、タッチするだけで操作は出来る。もしかしたら、寝ぼけて携帯を触ってしまったのかも。…でも、だとしたら…!

恐る恐る倉間を見ると、彼も彼で私と同じように顔を真っ赤にしていた。



「思い出したかよ」
「うっ、…」
「まさか、冗談じゃないだろうな」
「ち、違うっ」
「…そ、うかよ」


お互い無言。これは、どうしたら良いんだろうか。もじもじしていたら、倉間が急に携帯を弄り始める。
それをぼーっと見ていると、倉間は私の顔をもう一度見た後、また視線を下に落とした。

すると、軽快なポップスが辺りに鳴り響く。手に持っていた携帯がブルブルと震える。…倉間からのメールだ。
急いで開いて見て見ると…





>すき

俺もだばーか




バッと顔を上げると、倉間が顔を真っ赤にしながら俯いていた。








涼雲さんへ相互記念


20111230



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