「え、俺がですか?(なんで俺がこんなことしなくちゃいけないんですかぁ…)」
「ごめんなさいねぇ、鶴ちゃん。よろしくねぇ」
「わ、分かりました…(はぁああ…俺の休日がぁ…)」










俺の幼馴染の名前のお母さんに、娘の部屋の大掃除を手伝ってほしいと頼まれたのは今日の朝のこと。
年末で部活も終わりで特に予定がなかった俺は断りに使える理由がなく、半ば強制的に彼女の家に連れてこられた。

それからお母さんは正月のためのお買い物に出かけて行き、俺はしぶしぶ彼女の部屋へ向かったのだった。


そんな俺を出迎えたのはパジャマ姿で爆睡している幼馴染の姿。部屋は綺麗とは言いがたく、今日の時間のほとんどがここの片付けに使われると思うとすごく気分が落ち込む。…とりあえず名前を起こしましょうか。



「朝ですよ、起きて下さい」
「んー、後4時間」
「そんなギャグみたいな事は良いですからさっさと起きて下さいよぉ」
「んー…あ、鶴正ぁ?何でここにいるの?」


ようやく俺がいることに気がついた名前がゆっくりと起き上がる。俺は名前のお母さんに大掃除を手伝ってほしいと頼まれたことを伝えると、名前は少しだけ悪そうににへゃっと笑う。


「あー、ごめんごめん。お母さんってば鶴正のことめちゃくちゃ頼りにしてるからさー」
「頼りにされても…」
「あははっ、ごめんごめん。じゃあ片付け始めよっか」


カラカラと笑いながら、名前は自分のパジャマのボタンを豪快に外し始め…っ!!??


「ちょ、何やってるんですか!」
「え、着替えないと片付けも何もできないでしょ?」
「だからって俺がいる所で…!」
「え、何?鶴正恥ずかしいの?私の裸見るの〜」
「っ!!あ、当たり前じゃないですか!俺、男ですよっ!」
「あはははっ、思春期だなぁ。昔は一緒にお風呂入ったりしてたのに」
「そんなっ、それは、ああもう!止めてください!っ、俺部屋から出てますから早く着替えてくださいよ!」
「はいはい」


バタンと勢いよく扉を閉めて俺はドアを背にへにゃりと座り込む。
ああ、もう彼女は何であんなに…デリカシーが無いというかなんと言うか。まるで俺を男として見てない。…その事実に少しだけヘコんでしまう。
…俺は名前が好きだ。でも彼女はいつもあんな調子で、…俺の想いは報われるんでしょうか…。はぁ、考えたら虚しくなってきた。

はあああああっとため息を吐いていると、名前が着替えたみたいでドア越しに俺に声をかけてきた。もう一度ため息を吐いて、俺はドアノブを開けた。





 







それから4時間後、物を整頓し、掃除機をかけて、埃をふき取った名前の部屋は最初見たものと見違えるくらい綺麗になった。名前がやりきった、という清清しい顔をしていますが、ほとんど俺が片付けましたからねコレ。

綺麗になった床にどーんと寝転んで、名前は嬉しそうに笑った。


「こりゃ一人では出来なかったよー。ありがとう鶴正」
「あー、はい」
「あれれお疲れだねぇ」
「(誰のせいだ誰の)」
「んー、ふと思ったんだけどさあ」
「?」
「私コレ、一人暮らしとか出来るのかなぁ?」
「いや、無理でしょう」
「そんな即答しなくても」

カラカラと笑う名前に、ため息しか出なかった。なんかさっきから溜息ばかり吐いてますね、俺。新しい年を迎えるというのにこんな調子で良いんでしょうか。なんて思っていると、名前が言葉を続ける。


「鶴正がいなくちゃ駄目だなぁ、私。こりゃ鶴正に一生面倒見てもらわないとねぇ」
「っ!!!」


ドカッ、バタン。
勢いよく立ち上がったせいで、傍に置いてあった掃除機に勢いよくぶつかる。


「あれ、どうしたの鶴正」
「な、なんでも、ないです」


赤くなった顔を隠すように俺は彼女のベッドに顔をうずめる。ああ、もう。彼女のペースに巻き込まれないようになる日が訪れるんでしょうか。…来年の抱負にでもしましょうかね。





年末準備をはじめよう!





20111230




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