「わたし、のりくんのことすきだよ」
「そっ、そうかよ」
「だからね、おおきくなったらのりくんのおよめさんにしてね!」
「―――――」







いつも見る、昔の夢。在り来たりな、それでも夢がたくさん詰まったあの頃の夢。
私は今でも典人のことが好きだ。…ただあの日、私の言葉に典人がどう答えたのかが思い出せない。彼は、私になんて答えたのだろうか。…ただ、あの後すごく幸せな気分になったということだけは覚えていた。

隣で雑誌を読む典人に目を向ける。アイスキャンディーを食べながら、ページを捲る音が響く。彼は私のほうに目もくれない。
一応、私と典人は恋人同士だ。だけど典人はサッカーで忙しいし、たまの休みにこうして会うけど、典人は照れてるのかあまり私と喋りたがらない。そんな彼の様子は可愛いけど、少しだけ不満だ。

唇を尖らせながら、典人の脇腹に持っていたアイスの棒(もちろん食べた後のやつだよ)をぐいっと押し付けると、ギロリと睨まれた。



「汚ねぇな」
「だって典人が構ってくれないんだもん、仕方ないじゃん」
「仕方なくねぇよ馬鹿」
「馬鹿って言ったほうが馬鹿だもん」
「ガキみたいな返しすんなよ…。はぁ」


典人は持っていた雑誌を置いて、私の近くまで移動してくる。なんだかんだいって優しい典人は私の自慢の彼氏です。
ガリっと残りのアイスキャンディーを全て口に含んだ典人は、私の持っていた棒を奪って2つともゴミ箱に放り投げる。

カラン、カラン…中身の入っていなかったゴミ箱にアイス棒が入って気持ち良い音が鳴る。結構距離があったのにすごい!歓声をあげると、当然だろってドヤ顔で言われた。自信家だなぁ。



「ガキって言えばさぁ、昔私が言ったことって…覚えてたりする?そのー…約束、とか」
「昔の約束?…………あー…」


典人がひじょうに複雑そうな表情になったので、多分覚えているのだろう。
ああ、どうしよう。肝心なところが思い出せない、なんて言ったら典人はきっと怒るだろうな…。


「あ、あれがどうかしたのかよ」
「えー…、ああ…ウン」
「?ハッキリしないな、どうしたんだよ」


グイッと典人に顔を近づけられて、少しだけドキっとしてしまう。
典人は人の嘘に敏感だ。きっとここではぐらかしたとしてもバレてしまうだろう。私は正直に言うことにした。



「…あぁ、そうか」
「ごめんね…、…あ、でもあの時すっごく嬉しかったってことだけは覚えてるよ。ねぇ、典人。何て言ったの?」


私がそう聞くと、典人はバッと顔を赤くして私から目を逸らした。…?
どうかしたのか?と聞くと、彼らしくない焦った声で捲し立てるように喋った。


「い、いい、今は教えねぇよ!」
「ええーっ、何で?」
「教えねぇもんは教えねぇよ!つーかそんなに気になるなら覚えときゃよかっただろーが」
「だって覚えてないものはしょうがないじゃん!」
「じゃあしょうがないな、諦めろ」
「典人のドケチ!」


唇を尖らせて拗ねる彼女を見ながら、倉間はバレないようにため息をつく。
今は、言えるわけないだろ。








「わたし、のりくんのことすきだよ」
「そっ、そうかよ」
「だからね、おおきくなったらのりくんのおよめさんにしてね!」
「おっ、おとなになったらおれからぷろぽーずしてやるからまってろ!」







俺とあいつが大人になったら、あの時の約束を…









*
「となり」さまに提出させていただきました、ありがとうございました^^


20111126




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