「ほら、この通り大丈夫だったんだから…な?」
「ひっぐ…ううっ、うっ…」
「心配かけてごめん。でも、病院の検査も大丈夫だったじゃないか。俺自身ピンピンしてるしな、…ほら」
「ふっ、うっ…ううっ…」
「………名前、本当にすまなかった」


白恋戦で俺がケガをして、チームメイトやマネージャーたちに迷惑をかけてしまった。
マネージャーの中には、俺の彼女の名前もいて…。彼女は俺が倒れるところを泣きながら見ていたらしい。

それから、試合が終わっても…今こうして雷門中のサッカー部の部室に帰ってきても、ずっと泣き続けていた。


「三国せんぱいが、痛そうで、いや、だったの」
「ああ」
「相手の人、大嫌い、三国先輩に、ケガさせるなんて、さいあく」
「…」
「わたし、先輩がもし大怪我してたら、って思ったの。サッカーできなくなる、なんて…いやだよ」
「…ごめんな、名前」

負傷していない方の手で、彼女の細い体を抱きしめる。
名前はビクリと体を揺らして、俺の腕の中から俺を見上げた。涙で濡れている顔さえも愛おしくて、可愛くて。

俺のために涙を流してくれる優しい女の子。ゆっくりと彼女の頭を撫でると、名前の腕が俺の背中にまわる。


「三国先輩、三国先輩。怖かったよ…っ」
「…ごめんな、名前」
「……」


急に黙った彼女を不思議に思い、顔を覗き込むと、名前は不安そうに表情を歪めていた。それから、小さく「ごめんなさい」と呟く。


「どうしたんだ?」
「…三国先輩が、悪いんじゃないのに…私が我がまま言うから、困らせてごめんなさい」
「…名前」
「三国せ…んっ…」


腕の中の名前に触れるだけのキスをする。…2秒も触れ合っていなかった、お子様なキスだけど、俺も名前もいつまで経っても慣れない。
とろん、という表現が一番合っている…と思う。そんな表情をした彼女が、真っ赤になりながら俺を見上げる。


「心配するな。俺は困ってなんかいないさ」
「でも…」
「大丈夫。それに、お前に心配をかけてしまったのは、俺の責任だ。だから謝らせてくれ」
「せんぱい、…せんぱい」


複雑そうな顔をした名前を、再び優しく抱きしめる。
不安にさせてごめん、心配かけてごめん。俺のために涙を流してくれて、ありがとう。


「せんぱい、好き…。好き、好きです」
「俺も好きだ。名前のことが、誰よりもな」


ぎゅっと抱きしめあって、愛を囁き続ける俺たち。
端から見ればおかしな光景かもしれないけど、俺たちはそれでよかった。

彼女の、名前のぬくもりを感じることができるだけで、よかった。









**
さん、ごくさん…!グリズリーてめぇ!何やってんだてめぇ!三国さーん!となって書きました。
三国さん早く治ってね。


20111111



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