名前と二人で夏休みにプールへ行くことに決まった。期末テストの後にその予定が決まって、それから8月の前半までずっと楽しみにしていた。
そして今俺は、更衣室から少し離れた場所で彼女が出てくるのを待っていた。


「お待たせ」

彼女の可愛らしい声が聞こえる。俺は、色々と期待しながら(男の性ってやつだ)口の中に溜まった唾を飲み込み、そして顔をあげる。


「っ…!」
「倉間…?どうかしたの?」
「いや、別に…」

…じゃねーよ!ヤバイだろ!可愛すぎるだろ!ヤバイ、やばいやばいやばいやばい…
オレンジ色のワンピースタイプの水着から覗く白い肌に、すらりと伸びた生足…。いつもより(当然だが)露出が多い彼女の水着姿は、俺を興奮させた。

とりあえず彼女の右手をとりプールのほうへ歩き始めると、照れたように笑いながら嬉しそうに着いてくる名前。ったく、可愛すぎるだろ!
…とにかく、一通り水で遊んでから昼食をとることになった。

プールサイドのベンチを陣取り、名前に荷物番をしてもらい、俺は昼食を買うために売店へ向かった…のが間違いだった。


焼きそばと飲み物、フライドポテトなどをトレーに乗せ名前のもとへ戻ると…。
何故か彼女の周りに見慣れた奴らがいた。…あれ、幻覚…か?

近づいてみると、やはり…名前を囲むようにして南沢さん、浜野、速水、霧野、そして神童がいた。…え、これどういう状況?
すると帰ってきた俺に気がついた名前が手を振ってくれる。その横で、南沢さんと霧野がニヤリとしながら俺を見てきた。…ああ、確信した。

俺はふるふる震える手を押さえつけながら、奴らのもとへ駆け寄る。


「何してんだよ!」
「倉間、すごいよね!みんなプールに来てたんだって!すごい偶然!」
「ああ…すごい偶然だな」

南沢さんはそう言うけど、明らかに視線が泳いでる奴(速水と神童)がいるからな!
そして浜野はフライドポテトを勝手に食うな!っ、とにかく!


「何しに来たんスか!」
「何って…泳ぎ(邪魔し)に来たに決まってるだろ?」
「見え見えだっ!」
「倉間?さっきからどうしたの?」
「どうしたのって、…ああっもう!」


絶対コイツら(特に南沢さんと霧野)邪魔しに来たんだろ!ああ、調子のって言うんじゃなかった!南沢さんにプール行くこと言うんじゃなかった!


「ちゅーか名前、水着姿も可愛いな!」
「え、あ…ありがと浜野」
「名前はいつでも可愛いぞ」
「き、霧野…!」
「お、おい…霧野…」
「なんだよ神童、お前もそう思うだろ?」
「そ…それは、そうだが…だけど、…」


ちらちらと俺を気にする神童、そしてあわあわと先ほどからテンパってる速水以外の奴らは皆名前の近くで彼女を囲むようにして話し続ける。段々イライラしてきた。
すると俺が睨みつけているのを見た南沢さんが、立ち上がった。


「じゃあお邪魔虫は退散するか」
「…?南沢さんたち、もう行っちゃうんですか?」
「ああ、誰かさんがえらくご立腹だからな」
「誰かさん…?」
「じゃあな」

名前にそう言うと南沢さんは最後に俺の近くまでやってきて、コソリと耳打ちしてきた。


「ちゃんと目を離さず見てろよ、俺たちが声をかける前にコイツに近づいている男がいたぞ」
「!!」

南沢さんはそういうと、状況をつかめていない浜野の腕を引きながら、みんなを引き連れて帰って行った。…チッ、なんだよ。
俺は彼女の隣に座り、自分の焼きそばを食べ始めた。


「倉間…?」
「…食えよ」
「…うん、ありがと」

笑いながら焼きそばに手をつけ始める名前。
やっぱり何も分かっちゃいねえ。…まあ、だからこそ。



「(俺が目を離さないようにしないとな…)」


南沢さんに指摘されたってのが、ちょっと癪だけど。






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