「西野空くんほんっと可愛いなぁ、ぎゅっ!」
「うわっ!もう名前!いきなり抱き付くのはやめろって言ったじゃん!」
「だって西野空くんが可愛いのがいけないんじゃんか〜っ」
「だからーっ!」


ボクの彼女の苗字名前。とっても可愛くて優しい自慢の彼女なんだけど…、でも少しだけ…いや、とても癖のある子だ。
彼女は可愛いものに目がなくて、もちろんそれは人に対してもモノに対してもだ。

ボクは世間一般には可愛いといわれる容姿をしている。ボク自身それを武器にしていたりする。(たとえば宿題忘れたときに、女の先生にぶりっ子して見逃してもらったり)
でも、でもそれでも…


「(彼女には可愛いよりかっこいいって言われたいんだけど!)」


名前はボクを見るといっつも抱き付いてきて、可愛い可愛い可愛い可愛いって連発する。
最初は可愛い大好きな名前がボクに抱き付いてくれるだけで幸せだったけど、さすがにこうも可愛いと連発されると、男として情けなくなってくる。ボクは名前に可愛いとしか思われてないのかな?



「あのさぁ、名前」
「ん?どうしたの?」
「名前はボクのこと、どう思ってるの?」
「どう思ってるって…」
「可愛い?かっこいい?」
「そりゃもちろん可愛いよ!」
「はぁ…」


あーっ、もう我慢できない!
ボクは名前にかっこいいって思われたいのに!名前はそれとは逆のコトしか言ってくれない!だったら…かっこいいって思わせてやるから!


「ちょっと、名前」
「ん?どうしたの?」
「…ボクのメガネ、外してみて?」
「え?なんで?」
「いいから」
「んー…」


名前が首を傾げながらボクのメガネをとったその瞬間、ボクは名前との距離を一気に詰める。
突然のことに名前が驚き、ふらつく。ボクは名前が後ろに倒れないように、その華奢な背中を抱いた。


「え、え?西野空くん…?」
「ねえ、名前」
「な、なに?」
「名前ってさぁ、いっつもボクに可愛い可愛いって言ってるけどさぁ…どうしてなの?」
「そ、それは…西野空くんがとっても可愛いから…」
「じゃあボクは可愛いだけなの?」
「え?」
「ボクとしては可愛いよりかっこいいって言ってほしいんだけどなぁ〜」
「な、なんで?」
「なんでって…」


可愛い至上主義の名前には少し難しかったかな?
う〜ん、じゃあ…


「ねえ、名前?」
「!!に、西野空くん…?」
「ボク、男の子だよ?」
「え、あ…」


いつもの声より数倍低い声で、名前の耳元でそう囁く。わざと耳に息が当たるようにしたから、名前がとてもくすぐったそうに身を捩った。
ボクは名前から体を放し、それから彼女を下から覗き込む。すると、ホントに名前ってわかりやすい。顔が真っ赤になってる。


「ねえ、ボク可愛い?」
「っ…」


ねえ名前、ボクね。自分が可愛いことも勿論知ってるんだけど…でもね。


「ねえ、ボクメガネ取ったら…かなり印象変わるでしょ?」
「う、うん…」


さっき名前に取らせたメガネ。ボクはメガネがなかったら、大分印象が違うんだよ。
ボクは自分の容姿に自信を持ってるから胸を張って言えるけど…



「ねえどう?ボク、かっこいいでしょ?」
「うっ…うん」


ギャップ萌えっていうのかな?最近の女の子はみんなそれが弱点なんだね。
ほら、現に…。可愛いものが大好きなはずの名前が、かっこいいボクを見てこんなに顔を赤くしている。


「西野空くん…かっこいいよ」
「あはっ、そう言ってもらえてうれしいよーっ」




彼女にばかり優位に立たれてたら、ダサイもんね!




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テーマ「人外ファンタジー」
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