※スレ速水注意





速水くんと喧嘩をしてしまった。理由は…、うん、アレは完全に私が悪かった。
速水くんが部活で上級生の先輩に朝練のときに怒られたらしくて、授業中も放課後もずっとヘコんでいた。だから何を話しかけても「あぁ…」「ぅぅ」みたいな返事ばかりで、痺れを切らした私が、「そんな理由でくよくよ悩むな!女々しすぎるよ!」って言っちゃって、…速水くんが教室から飛び出していったのだ。追いかけたのだが、速水くんは足がとても速いので追いつけなかった。だけど、カバンは教室にあるので戻ってくるだろうと思って1時間ほど待ったのだが、帰ってくる気配なし。仕方ないと思い、帰宅していたのだが…



「君めっちゃかわいいじゃん」



ど う し て こ う な っ た



住宅街の細くて街頭はあるけど暗い道。いつもは速水くんと帰るので意識したことがなかったが、かなり怖い場所だ。
そこで、3人の男子高校生に囲まれている女子中学生…私だ。
普通に歩いて帰っていたら、道端でタバコ吸ってる男子高校生たちがいて、おいおいおおい馬鹿かよまあ私には関係ないし無視して歩こうと溜まり場の隣を通り過ぎた時に呼び止められてこうなった。…こうなった。



「ね、その制服雷門中だよね?俺も雷門だったんだよ」
「…は、はぁ」
「何年?つか名前は?超可愛いよね」
「いや…」
「いや…だって!かーわいい!恥ずかしがってんのかな?」

いやいやねーよ。
ギャル男風のお兄さんたちの口からタバコのにおいもしてきて、よくよく見れば彼らの足元には中身のなくなったビール缶。これは…マズいんでねーの?

そう思った瞬間、私の右腕を引っ張った高校生A。バランスを崩して、私は高校生Aにガッチリホールドされてしまった。


「お兄さんたちね、キミと遊びたいんだ。もちろん、そういう意味で」

そう言いながら私の体に手を這わす男。う、うぎぃ気持ち悪いキモイキモイキモイ!抜け出そうとしたけど男女の力の差でとてもじゃないけど無理だった。そんなそんなそんな…私のハジメテは速水くんにあげる予定だったのにぃいいとか緊張感のないこと言ってるけど私の心臓バクバクでやばいですどうしようどうしようどうし「なにしてるんですか」!!?


突然聞こえた第三者の声に、男子高校生と私は一斉に目を向ける。すると、そこにいたのは…


「(速水くん…!!?)」


そう、そこにいたのは間違いなく速水鶴正くんだった。ただ、少しだけ様子がおかしい。なんというか、いつも以上に暗いというか…表情が見えないというか…。
私が息を呑んでいると、高校生が速水くんを罵りはじめた。


「ああ?なんだよお前」
「その人を放してあげてください」
「なんでお前にそんなこと言われなきゃいけねーんだよ」
「あ、もしかしてコイツ、この子のカレシとか?」
「アハハハハハ!マジかよ!こんなメガネのヒョロっちぃ奴と付き合ってんのか?趣味わるぅ!」
「アハハハハハ!!」
「な…!「はぁ」


高校生たちに反論しようとした私の言葉の上に、速水くんの大きなため息が被さった。
高校生たちの視線が、速水くんに集まる。いつもなら、こんな状況に陥ってしまったら速水くんはすぐに縮こまるのだが、今日は違った。速水くんは高校生を無表情で見返しながらもう一度大きなため息をついた。


「ぎゃーぎゃーと煩いんですよ」
「なんだと?!」
「大体、貴方たちには言われたくないですよね。未成年のタバコに飲酒…ふふっ、終わってますよね人間的に」
「なんだとっ!?」
「なんだと!?しか言えないんですかぁ?外見もですけど、知能のほうもダメみたいですね」


は、速水くん…?
いつもより饒舌で毒吐きな速水くんに吃驚する。え、え、え…何があったの…?

すると、一人の高校生が速水くんの胸ぐらをつかんで手を振り上げた。それを見た速水くんが静かに笑って、口を開く。


「へえ、殴るんですか。殴るんですね、ふうん、暴力沙汰にしちゃうわけですかぁ。あ、別にいいんですけどね。…俺雷門中サッカー部の一軍なんですよね。あはは、俺の言いたいこと、わかりますかぁ?雷門はサッカーの名門校ですよ。俺を殴ったら、雷門中サッカー部に影響が出る。ということは…ふふっ、言わなくてもわかりますよねぇ?」
「お、脅してんのかよ!」
「そうとれるんなら、そうなんじゃないんですか?」
「チッ、クソが」


高校生は速水くんから手を放し、近くにあったビール缶を蹴り飛ばすと夜の街に消えていった。
そんな高校生たちのことを冷めた目で見ている速水くんに恐る恐る声をかけると、今度は私のことを睨んでくる。


「なんであんな奴らに捕まってるんですか、馬鹿なんですか」
「え、あ…ご、ごめんなさい…」
「ごめんなさいじゃないですよ、まったく」
「…あ、あの…速水くん?なんだかいつもと性格が違うような気がするんだけど…」
「………………………あなたのせいですよ」
「え?」
「……俺は今とってもイラついているんですよ。高校生のせいでもありますし、苗字さんのせいでもありますので、この怒りを鎮めるために今からコンビニに寄ってあなたにハーゲンダッツを奢ってもらいます」
「は、は…え?」
「……俺だってあなたを守れたでしょう?…結構、悔しかったんですよ、苗字さんに言われた女々しいって言葉」
「あ…!」


そうだった、私…速水くんと喧嘩してたんだった。
…そうだよね、うん…さっきの速水くん、高校生にも負けなくて…かっこよかった。


「…わかったよ、コンビニ行こう」
「…ええ」
「……速水くん、すごく男らしかったよ」
「……」


速水くんは何も言わなかったけど、耳が真っ赤になっていて、私はそれを見て、速水くんにバレないようにクスリと笑った。




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