「口の聞き方知らな太郎くんはそろそろ御国へ帰ると吉」
「はあ?何言ってんだよ殺人鬼!お前こそさっさと消えやがれ!」
「ワターシは愛しの名前といちゃいちゃらぶらぶするからカエレマセーン」
「誰が誰といちゃいちゃらぶらぶだってェ?もういっぺん言ってみろよゴルァ」
「………」


こんにちは、私の名前は名前。今はアルカ教団に所属していて、前世はバルカンの弟子だったの。
そんな私は今、ひっじょうに困り果てていた。それもこれも、この「前世はバルカンの息子」だった二人のせいだ。

昔の私…バルカンの弟子だったころの私は、いつも武器磨きの仕事(またの名を雑用)をバルカンから任されていて、こいつらの前世とも顔見知り?だった。ただ、それだけの関係だったはずだ。なのに…



「俺と名前は前世から愛し合っているんだぜ、チェリーボーイ?」
「チェリーなんかじゃ、ね、ね、ねぇよ!」
「(チェリーなのか…)」
「だいたいお前馬鹿か、コイツと前世から関係があったのはオレのほうだ!」
「(ねぇよ)」


大体、なぜ私たちが3人だけで顔を合わせているんだ?
私はアルカ教団、スパーダはルカ・ミルダ一行、ハスタはレグヌム軍…。何故敵同士である私たちが3人、集まった?確か私はチトセと一緒にルカ・ミルダをアルカ教団へ勧誘しにきたのだ。そこへ、偶然ハスタがやってきて、スパーダと私のことで言い争いになって、それからチトセたちが空気を読んでいるのか読んでいないのか、そそくさとこの場を後にして、そして3人きりにされた。…ああ、マティウス様、なぜ私がこのような目に遭わなければならないのでしょうか…。



「つーか名前はどう思ってんだよ」
「は?」
「名前は俺がいないと寂しくて死ぬくらい俺に依存しているんだぷー」
「てめぇには聞いちゃいねえんだよ黙ってろ!」
「どう、思ってるって…」


正直この二人には何の感情も抱いちゃいない。むしろ、毎回毎回このような喧嘩をされて、うんざりしている。
それに私の覚えている限りでは、前世でもこの二人とは何の関係もなかった。ただ、今この状況のように、ウザ絡みされていたことだけはしっかりと覚えている。

そこまで考えて、私は深い深いため息を吐いた。前世でも現世でも、私はこいつらに絡まれているのか…。



「迷惑…だと思ってる」
「だ よ な!ほらみろハスタ!迷惑だってよ!さっさと消え失せろ!」
「どう考えてもデュランダなんとかさんへの言葉だぷー」
「お前らどっちもだよ!」


ああ、ついに言葉に出してしまったが後悔はしていない。
私はこいつらに構っている暇なんてないのだ。一刻も早く、アルカ教団からの命を遂行しなければならない。


「私はお前たちのことなんてどうでもいいし、前世でもお前らを磨いてやってただけだろう!何でここまで絡まれなければいけない!」
「好きだからに決まってんだろ」
「俺は愛してる、だけどな!」


二人の男性に取り合いされてる。女性なら、一度はあこがれるシチュエーションだ。私だって、昔は憧れていた。
…だけど現実でこんなことされたら、迷惑なだけだ。あることないこと、すべてが彼らの口から言葉になって吐き出される。恥ずかしくて面倒すぎて倒れてしまいそうだ。

私が頭を抱えていると、別任務に行っていたシアンがこちらへとやってきた。



「おい名前、レグヌム兵の討伐、完了した…。…?チトセやあいつらはどこ行ったんだ?」
「シ、シアン…!」
「!!ちょ、なんで抱き付くんだ!」


まさに救世主!
スパーダとハスタに囲まれていた私はすぐさまシアンの後ろに隠れる。すると、自然と二人の視線はシアンに移った。


「あ゛?なんで犬男がここにいんだよ」
「イヌヲ?イヌヲ?イヌヲ、さっさと後ろにいる姫君を引き渡すんだぴょん」
「ちょ、名前!どういう状況なんだ…?」
「いいから!ちょっと助けてよ!後でぎゅってしてあげるから!」
「なっ…ボクは別に…!!」
「「ぎゅっだと!?」」


「ぎゅっ」という単語を聞いた瞬間、目をギラつかせるハスタとスパーダ。二人はそれぞれの獲物を構え、じりじりとシアンに詰め寄る。
しめた!そう思い、私はじりじりと近づく二人に合わせて、シアンの背後からじりじりと離れる。そして、ハスタとスパーダがシアンに飛び掛かった瞬間、すぐさまその場から逃げ去った。後ろのほうでシアンの叫び声が聞こえたが、それを無視して私は走った。



さらばシアン、君のことは忘れないよ!




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