俺は悩んでいた。どうやってこの状況を打破しようかと悩んでいた。
それもこれものんびりと俺のベッドの上で雑誌を読んでいる幼馴染のせいだ。

一応、俺と名前は付き合っている。それに加えて幼馴染という関係で、お互いのことを知り尽くしていて、部屋だって頻繁に行き来する。…俺たちは本当に仲が良かった。だけど、気の知れている仲だからこそ、遠慮しない部分もあって…。それが、今の状況だ。


普通、普通だ。
普通の彼女なら、彼氏のベッドの上で寝転ぶか?…いや、寝転ばないだろう。
少し恥ずかしがって、彼氏と距離をとり、どことなく切ない距離感を感じて、それでいて甘い雰囲気で…みたいな感じだろ、絶対。だけどうちの名前にはそれが無い。
仲の良いことは良いことだけど、もう少し恋人らしい雰囲気になってみたい。…それに、この状況は俺的に少しヤバイ。


だって考えてみろ?自分の好きなやつが自分の部屋にいて、しかもベッドの上にいるんだぜ?
俺だって思春期男子だ。…いつまでも耐えられるはずがない。




チラリと名前を見ると、彼女は雑誌に夢中のようで、ページを捲る音が響くだけだ。
…あいつは俺のこと全然気にしてないのかよ。

少しだけムカっときて、俺は彼女が寝転んでいるベッドへと近づいた。



「?どうしたの?」
「…別に」


雑誌から顔をあげ俺のほうを見てくる名前を軽くあしらって、俺は彼女と同じようにベッドの上に乗った。
それから彼女の真横まで体をずらす。名前との距離は数センチ。ベッドに移った俺の匂いと、名前から漂う甘い匂いが混ざって、妙にドキドキする。



「倉間?」
「…さっきから何見てんだ?」
「ベッドの上にあったサッカー雑誌」
「ああ…」
「これ、雷門のインタビュー載ってたんだね。私も買えばよかったよー…」
「インタビューつっても神童のだけだけどな」
「えー、でもここに倉間写ってるしー」


名前の指差すページを見れば、試合中の俺の姿が。



「こんなの練習見に来ればいつでも見れんだろ」
「えー、この倉間がいいの」
「はあ?なんでだよ」
「だってすっごくかっこいいんだもん」
「…は?」


俺が慌てて名前を見ると、名前は、はにかみながら雑誌の中にいる俺をなぞる。


「私マネージャーじゃないし、試合に行ってもいつも観客席からだから、こんなに至近距離で試合中の倉間の顔見れないもん」
「……」
「今日はじめてこんなに近くから見たけど…、思わず見惚れちゃったよ」


なんて、軽く言うものだから俺の頬はもちろん真っ赤に染まって。
照れ隠しに彼女を強く抱きしめた。


「わわ、倉間?」
「……」
「いきなりどうしたの?」


そう言いながら俺の背に手を回してくる名前。
ああ、やっぱこの距離感が俺たちにはちょうど良いのかもしれない。



「……ま、これでいいか」
「何の話?」
「…こっちの話」


名前を抱きしめながら、さて、こいつのペースを崩すにはどうしたものか、と考え始めた。



最大級の好きを送ろう




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