神童くんも霧野くんも倉間くんも浜野くんも一体何なんだ。
名前と俺が付き合ってることくらい知っているはずなのに、なんで彼女とあんなに仲良くするんだ。…そりゃあ、…そりゃあ分かってますよ。同じ部活で、同じ学年、それに黒の騎士団が来た時に部を辞めなかったサッカー部2年の絆が強いって事くらい。だけど、俺は不安なんですよ!

正直、俺はかっこいいといえるような容姿をしていない。だけど、みんなはどうだ?
神童くんはクールでかっこいい、霧野くんはとても綺麗だ、倉間くんはちょっと背が低いけど男らしい、浜野くんだっていつも笑顔。性格だってそうだ。神童くんは泣き虫だけど芯が強い、霧野くんは顔に似合わず男前、倉間くんはすぐ怒るけど男らしい、浜野くんは明るくて人気者だ。


だけど、だけどだけど俺はどうだ?
俺は顔がかっこいいわけでもない、性格なんてネガティブでだめだめ、だめだめだめ男だ。

っ、だから不安になるんだよ!自分より、かっこいい人たちが周りにいるから、いるから…名前が、取られちゃうんじゃないのかって、怖いんですよ…!

なのに、みんなも…名前も、何で分かってくれないんですか!俺がこんな性格だってこと、みんな分かってるはずなのに!
…俺は怖くて自分からは何も言えない。受けるだけの生き方。だけど、仕方ないじゃないか…






最近、私の大好きな彼氏の速水くんの様子が少しだけおかしい。だから私は倉間と霧野に相談した。


「速水のネガティブなんて今に始まったことじゃないだろ」
「いつものネガティブじゃないんだよ…。今速水を纏ってるのは負のオーラというか…、とにかくいつもと違うんだよ!」
「俺は…苗字の言う通りだと思うぞ」
「やっぱり霧野もそう思うよね!…でも、理由が特に思いつかないんだよね」
「まあ一度じっくり速水と話してみたら良いんじゃないか?」
「うーん…やっぱりそうだよねぇ…」






浜野と一緒に速水の様子を見に行くと、いつも以上に落ち込んでいる様子だった。…さて、どうしたものか。

俺と倉間と霧野と浜野は苗字と速水の関係が上手くいっていないことに気づいた。そして霧野が2組に分かれて事情を聞きだそうと提案して、俺たちはそれに乗った。倉間と霧野は苗字担当、俺と浜野は速水担当。とにかく、今は速水に事情を聞いてみよう。…そう思って速水に近づいたのは良いのだが、じとーっとこちらを睨んできたので、少しだけ怯んでしまった。だが浜野はそんなのお構いなしに速水に近づく。…はあ、もう少し慎重になったほうが良いんじゃないのか…?






速水と苗字が喧嘩っぽくなった。いや、まあ実際は喧嘩じゃないんだけど、なーんか険悪というか。とにかく雰囲気は最悪で。二人の笑顔が見たい俺はなんとかしたいと思ったから霧野の提案に乗った。策は無いけど、頑張るぞ!

「なあ、速水〜」
「……浜野くん…それに神童くん」
「最近さ、苗字と上手くいってないの?」
「は、浜野!」
「へ?」
「良いんですよ神童くん。…本当のことですから」
「何が原因?」
「……」

そう聞くと、速水はメガネの奥の目を細めてこちらを見た。何か言いたげだ。こういうのはサッパリ言っちまったほうが楽だぞ!そう言うと、速水は少しだけ苛々したように話し始めた。






苗字について速水たちのほうに行くと、いつもは考えられないような大声で怒鳴っている速水がいた。アイツがネガティブだった理由は、まとめると俺たちへの嫉妬だったらしい。はあ、めんどくせ。隣にいる苗字を見ると、驚いたように口を開けて(まぬけっぽい)速水を見ている。きっと速水は苗字が全部聞いていることに気づいていない。ああ、おもしろいことになってきた。






肩で息をする速水がふとこちらを見る。すると釣りあがっていた眉毛は段々垂れてきて、顔が青ざめてきた。唇が震えて、み、みられた…と声には出さなかったがそう動いた。隣にいる苗字を見ると、口を開けて立ったままだ。…何か反応してやれ。

とにかく俺がすべきことはたった一つ。


「行ってやれ、苗字」


彼女の肩を押す。後は当人たちで解決すべきだ。さて、おせっかい終了。





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