俺の同級生の苗字名前はとっても不思議な子なんだ。
普段はぼーっとしていて、自由人って感じ。しかも先輩には敬語を使わないんだよ。失礼だろ!って思う人がいるかもしれないけど、それも含めて名前!って感じで今では当たり前になっている。

そんな彼女はもちろん天然で、放っておくとすぐにいろんな人の後について行っちゃうから俺がしっかり見守っておかないとね!おっと、ほら今も…。



「名前、クラシックコンサートのチケットが手に入ったんだ。一緒に行かないか?」
「名前、それより俺と一緒に遊園地へ行かないか?母さんが商店街の福引で当ててな、彼女と行けって俺にくれたんだ」
「ちょっと待て霧野、彼女と行けってどういう意味だ」
「そのままの意味だ神童、名前は俺の彼女だからな」
「妄想も大概にしたほうがいいぞ、名前は俺の彼女だ」
「お前こそ妄想するなよ神童」


霧野先輩と神童キャプテンが言い争っている間に、ぼーっとしている名前の腕を引っ張って少しだけ遠くに連れて行く。
するとやっと現実(?)にかえってきた名前が俺を見てほわりと微笑む。


「あれ?松風くん、こんなところでどうしたの?」
「名前、ドリンクが欲しいんだけど、貰っても良い?」
「あ、うん良いよー。あっちにあるから取りに行こう。…あれ?」
「どうしたの?」
「私、さっきまで神童先輩と霧野先輩といた筈なんだけどなぁ…?あれ?いつの間にここに来たんだろ?」
「どうしてだろうね?」
「うーん、まあ良いや。ドリンク取りに行こう」

ふわふわとした足取りでマネージャーがいるベンチまで向かう名前。ああ、可愛い。誰の毒牙にもかからないように、俺がしっかり守ってあげないと!




ベンチに着いたら、名前が葵からドリンクを受け取って俺に持ってきてくれた。すると、名前がいきなり前のめりに倒れた。…!!
どうやら足元にあった石に気付かなかったみたいだ。咄嗟に駆け寄ろうとしたが、俺より先に彼女を受け止めていた人がいた。


「大丈夫か?」
「あ…剣城くん、ありがと。助かったよー」
「べ、別にこれくらい、お前に怪「あっ、名前ドリンクありがとー!」
「あ、松風くんはいどうぞ」
「……」

何か言おうとしていた剣城の言葉を遮って、俺は名前からドリンクを受け取る。
後ろで剣城が何かいいたそうにしていたけどムシムシ。悪い虫は駆除しなくちゃね!

すると、また名前の体が前のめりになる。今度は倒れなかったけど。…一体何事かと思い彼女の足元を見ると、信助が名前の足に引っ付いていた。


「うわあ、ビックリした。西園くんかぁ」
「名前っ、ボクにもドリンクちょうだい!」
「うん良いよ。取ってくるね」


再びパタパタと葵たちのほうへ向かう名前を見送って、信助を少しだけ睨む。
すると信助もしてやったりと言いたげな表情で俺のことを見てきた。


「独り占めは駄目だよ、天馬」
「独り占めじゃないよ。俺はみんなから名前を守っているんだ」
「だからと言って人の言葉を遮るな」
「あれ、剣城まだいたんだ」
「!!」

あれ、なんか剣城が落ち込んじゃったけどまあいいや。
すると名前が信助の分のドリンクを持ってきたから、彼女からそれを奪って無理矢理信助に押し付けた。それから名前の腕を引っ張ってその場を後にした。信助の少しだけ怒ったような声が聞こえたけど、それを無視して走った。


逃げる途中に浜野先輩、倉間先輩、速水先輩、天城先輩、車田先輩、三国先輩、それからまだ言い争いをしていた霧野先輩、神童キャプテンや狩屋、輝、錦先輩に声をかけられたけど全部全部無視して、気付けば部室の裏まで来ていた。



「松風くん…?こんなところまで何か用かな?」
「ううん、ただ守らなくっちゃって思ったんだ」
「守る?」
「うん、そうだよ。ねえ、名前」
「なに?」
「俺が名前をずっと守ってあげるから、安心してね!」


俺がそう言うと、名前はふわりと優しく笑って頷いた。
これで彼女公認になった。これからもたくさんの魔の手から名前を守ってあげないとね!





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