吹雪くんのお家がこたつを出したとのことで、放課後彼の家にお邪魔することにした。
こたつって本当に暖かくて大好き。寒い寒い北海道じゃ必需品だよね!


「お邪魔しまーす」
「くつろいでいってね。僕、お茶いれてくるよ」


吹雪くんの家には誰もいなかった。普段はおじいちゃんと一緒に住んでいる吹雪くんなのだが、今日そのおじいちゃんはゲートボールの会合に出かけていていないらしい。パワフルだなぁ、雪めちゃくちゃ降っているのに。
こたつのスイッチを入れて、コートを脱いでもぐりこむ。当然つけたばかりなので暖かくない。吹雪くんが来るまでに温もっていればいいな。

すると襖を開けてお盆を持った吹雪くんがやってきた。
彼から温かいお茶を受け取って、それから自分のカバンに入っていたおまんじゅうを取りだす。私と同じようにこたつに入った吹雪くんが不思議そうにこちらを見てきた。


「おまんじゅう?」
「うん。今日吹雪君の家に行くって言ったらお母さんが持たせてくれたの」
「そっか、僕おまんじゅう大好きだから嬉しいな」


にこりとほほ笑む吹雪くんにつられて私も笑顔になる。
だんだんとこたつも暖まってきた。吹雪くんがいれてくれたお茶と私が持ってきたおまんじゅうがなくなる頃、向かい側に座っていた吹雪くんの足が、ちょんっと私の足に当たった。だけど吹雪くんは気づいていないのか、何も言わない。

触れている部分が熱くなっていく。吹雪くんのぬくもりがダイレクトに伝わってきて、なんだか恥ずかしいけど嬉しい、不思議な感情が私の心を支配する。

離すべきなのか、それともこのままにしておくべきなのか。
でも、急に離しちゃったら吹雪くんビックリするだろうし、意識してたって思われたらなんだか恥ずかしいし…。
そ、それに…。


「(吹雪くんのぬくもりを、もう少し感じていたい…な)」


次第に熱くなっていく顔を隠すように、こたつ布団に顔を埋めると、吹雪くんのぬくもりが離れていった。ああ、残念。そう思いながらこたつ布団から顔を離すと、目の前にいたはずの吹雪くんがいなくなっていた。…、…あ、あれ?


きょろきょろ辺りを見回す。どこにもいない。襖は開いてないし、もし開いていたとしても音がするから分かるはずなんだけど…。
すると、こたつ布団がもぞもぞと動いた。…え、え、え…


「ひゃあっ!」
「っぷ、あははははっ。相変わらず反応が良いなぁ」
「え、え…あ、ふ、吹雪くん…?」
「ふふっ、下からお邪魔します。…なんてね」


なんと、吹雪くんが私の足元から出てきた。
にこにことほんわかな吹雪くんだったが、これはかなり恥ずかしい態勢だ。なんせ私の足元から顔を覗かせているのだから。


「ふ、吹雪くんっ…!は、恥ずかしいよ…!」
「そう?…ふふっ、名前ちゃんぬくいなぁ」
「ううっ…」


私の腰に腕を巻きつけてすり寄ってくる吹雪くん。すごくすごく可愛らしいんだけど、すごくすごくすごく恥ずかしいよ…!!
離れてほしくて、吹雪くんの柔らかい髪の毛にそっと触れると、撫でられていると勘違いしたのか、吹雪くんがよりきつく抱きしめてきた。


「…こうして、誰かのぬくもりを感じるのが好きなんだ」
「吹雪くん…」
「暖かいなぁ。おじいちゃんは包み込んでくれるのうな暖かさなんだけど、名前ちゃんは優しい暖かさなんだ」
「……」
「僕、名前ちゃんが大好き。これからもずっと僕の傍にいてほしいな」


幸せそうに、だけど少しだけ弱弱しく口にした吹雪くん。
彼の過去のことを知っているから、私は何も言わずにすり寄ってくる吹雪くんの頭を、今度はちゃんと優しく撫でた。



「私も、吹雪くんとずっと一緒にいたいよ」
「…うん、ありがとう」


ふわりと笑って、それから、吹雪くんはゆっくりと目を閉じた。
大好きな人のぬくもりを感じながら、私もそっと、目を閉じた。







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