私の彼氏は独占欲が強い。
束縛…とまではいかないけど、私が倉間以外の男の子と話していると拗ねちゃうし、移動教室のときは必ず一緒に移動することを望む、ペアを組めと言われれば彼は迷わず私のところへ来るし、休み時間になると必ず私の机へやってくる。

彼氏彼女だから、これが普通なのかもしれないけど…。正直付き合うまで倉間がこんなにベタベタしてくるとは思ってもいなかった。
だってほら、倉間といえばツンツンデレの代表みたいな人じゃない?付き合う前なんてそれはそれは冷たくされたものだ。なのに、付き合ってからはツンデレデレデレくらいの割合になっている気がする。一体何が彼を変えたのだろう?



「名前、帰るぞ」
「ああ…うん」


私はマネージャーではないので、部室には入れないから帰りはサッカー塔の前で待ち合わせ。
すると倉間と一緒に出てきた浜野がニヤニヤしながらこっちを見てきた。


「まーたお二人さんで帰るの?ラーブラブ」
「うっせぇ浜野。おい速水、さっさと浜野連れて帰れ」
「え…あ、」
「倉間、速水くんが困ってるよ」
「…チッ。帰るぞ」
「あ、ちょっと待ってよ!」

スタスタとその場から去って行く倉間。私は浜野と速水くんに挨拶してから、倉間の背を追いかけた。
まったく、倉間は気分屋さんだなぁ。




倉間の隣に並んで歩く。冬になると日が沈むのが早くなって、まだ夕方だというのに外は真っ暗だった。
寒さで震える手に息を吐いて温める。気休めくらいにしかならないけどね。

そんなことをしていると、倉間は決まって私の手を強引に取って、握ってくる。小さいけどゴツゴツした男の子の手で、私の手を包んでくれるんだ。



「倉間の手、温かいね」
「寒いんなら手袋してこいよ」
「んー…、可愛いの持ってない」
「それ、遠まわしに買えよって意味か?」
「違うよー」

ホントは倉間と手を繋ぎたいから、なんてね。
倉間が私にベタベタしてくるって言ったけど、私だって大概倉間に依存している。

お互い自分にとって初めての恋人だから、どうも距離感がつかめない。
自分的には結構ベタベタしてるつもりなんだけど、果たしてこれでいいのかどうかも分からない。恋人って何すればいいんだろうね?

一緒に帰ったりキスしたり、手を繋いだり抱きしめあったり…。
付き合っているからできることなんだよね。


ううーん、なんだかこうして考えると「恋人」って意識しすぎなのかもしれないね。
もしかしたら倉間がベタベタしてくるのも、恋人らしくしなくちゃってキモチの表れなのかな?


ベタベタされるのが嫌なわけじゃないけど、倉間とはもう少し自然なお付き合いをしたい。無理せず、自分たちがやりたいようにする、一緒にいて苦にならないような自然なな恋人同士に。
それを倉間に伝えると、倉間は驚いたように目を見開いて、それから少しだけ呆れたような顔になった。…ん?



「お前、そんな風に思ってたのかよ」
「え、違うの?」
「…俺的には自然に過ごしてたつもりなんだけど」
「そ、そうなの?でも倉間、私と付き合い始めてから、その…ベタベタ?するようになったじゃん?てっきり恋人って意識しすぎて無理してるのかなって思ってたよ」
「無理してるっつーか…、お前と…」

そこまで言って言葉を切った倉間を疑問に思い、続きを促したが、倉間は先ほどの言葉の続きを喋るつもりはないようだ。だけど私は続きが気になって仕方がない。しつこく続きを促すと、痺れを切らしたのか少しだけ荒い口調の倉間が吠えるように言い放った。



「お前と一緒にいる時間を増やしたかったんだよ、悪いかっ!」


そう吐き捨てたあと、耳まで真っ赤になっている倉間は同じく顔が真っ赤な私を置いてスタスタと通学路を歩いていってしまった。








「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -