私は浜野先輩のことが好きだ。明るくて優しい先輩は、いつもみんなに囲まれていて…。
私はそんな先輩を見ているだけで、いつも幸せな気分になれた。

サッカー部のマネージャーは私以外みんな可愛い。キラキラ光っていて、女の子ってかんじ。でも私は地味で暗くて全然可愛くない。
だけど、そんな私に浜野先輩は優しく話しかけてくれる、他の人たちと変わらず接してくれる。
優しい優しい浜野先輩のことが大好きだ。この溢れんばかりの恋心をどうしようか。





「浜野先輩って、妹がいるんだって」
「へえ、そうなんだ」

ある日、お昼休みに友達の天馬くんと信助くんがお話をしているのが聞こえた。
浜野先輩の話題だったので、二人には悪いけれど盗み聞きさせてもらうことにした。


「俺たちと同い年らしいよ。だから、一年生たちが妹や弟みたいでカワイイって言ってたよ」
「先輩、よく僕らの面倒見てくれるもんね」


時間が止まった。



浜野先輩は、私たちを、私を妹扱いしていたんだ、ね。



ポカリとこころに何かがオチタ。
……ああ、私は心の中で少し期待していたのかもしれない。優しくしてくれる先輩に、どこか、期待していたのかもしれない。

恥ずかしいな、情けないな。色々な重い想いが渦巻く。その場にいられなくなって、私は逃げるように教室を後にした。





「名前、今日元気ないわね…どうかしたの?」

葵の問いに首を横に振る。ううん、何でもないよ。
笑いながらそう言うと、葵はもっと不安そうな顔になってしまった。どうやら上手く笑えていなかったみたいだ。
その途端、胸が苦しくなって、悲しい想いを吐き出したくなった。優しい葵に甘えた私は、今日聞いた話を全て彼女に話した。




「名前、それって浜野先輩から直接聞いた話じゃないんでしょう?」
「そう、だけど…」
「それに、妹みたいだ、だから年下は無理、とかそんな話じゃなかったじゃない」
「うん…」
「むしろ、カワイイだなんて…好印象よ!」
「そ、れは…葵や天馬くんや信助くんのことだよ、…私のことじゃ、ない」
「あら、私はそうは思わないわ。名前はカワイイ、絶対に!」
「お世辞は…」
「お世辞なんかじゃないわ。名前は優しくて仕事も頑張っていて、普段も可愛いけど、笑うともっともっと可愛い、とっても良い子。私の自慢の親友よ」
「葵…」
「自信をもって!まずは浜野先輩とたくさんお喋りしてみるといいわ。名前をたくさん知ってもらおうよ!」
「…私が、好きになっても…いいのかな」
「もちろん!」
「……ありがと、葵」


部活の休憩時間、私は葵に背中を押されて、浜野先輩にドリンクを渡しに行く。



「は、浜野先輩…!」
「あ、苗字じゃん。お疲れさま〜」
「お疲れ様です!…あ、これ…ドリンクです!」
「ありがとな〜!苗字は頑張り屋だな。無理しないようにな?」
「は、はい!」


ドリンクを渡した時に触れた浜野先輩の手。優しい笑顔。たくさんの浜野先輩を知っていきたいな。
何だか嬉しくなって、幸せな気持ちでいっぱいになって。自然と笑顔になった。すると、浜野先輩は先ほどよりも深く優しく笑った。



「苗字は笑ってたほうが可愛いな!」






ドキッと胸が高鳴った。ああ、大好き先輩。







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