(下品)





「名前ってこれまでに彼氏とかいた事あるのかなあ?」

部活が終わって、皆が帰り支度をしていた時だった。ユニフォームを乱雑にロッカーに入れながら、西野空がいつもの気だるそうな声で言った。
名前といえば、俺たちサッカー部のマネージャーで、品行方正で可愛らしい、才色兼備という言葉が地球上でもっとも当てはまるのではないのか?というくらい、俺たちには勿体無いくらいの素晴らしいマネージャーだ。

西野空の質問の話に戻るが、確かにそれは気になるな。今はフリーらしいが、あんなに可愛ければ、今までに彼氏の一人や二人、いてもおかしくはない。…それに、俺個人としても気になる、し。


「あるんじゃね?名前可愛いし」
「だよねぇ。…だったら、キスとかエッチとかしたことあるのかなあ?」
「に、西野空!何言ってるんだっ!」
「あははっ、やっぱり反応してくると思ったよぉ、童貞喜多くん」
「お前も童貞だろ、西野空」
「うるさいなぁ、…っていうかみんなそうでしょ」

簡易ソファに座りながら、ニヤニヤした表情で俺たちを見回す西野空。はあ、名前の話題から下ネタに展開していくなんて…、彼女に悪いことをしてしまった。


「つーか、名前の胸ってでかいよな」
「ああ、確かに。スタイルも良いよな」
「ジャージ姿もやばいよね〜。お尻がぷりぷりで、胸もエロくてまさに眼福ってかんじぃ」

好き勝手に名前を使って下ネタ話を繰り広げていく部員に、怒りが高まっていく。これはキャプテンとして注意しないと。


「お、おいお前たち!そんな話をされる名前の気持ちを少しは考えろ!」
「喜多」
「な、なんだ隼総」
「鼻血、出てるぞ」


!!!??

咄嗟に鼻の下に手を当てると、ぬるっとしたものが手に絡ん…っ!


「あっははは喜多はムッツリだなぁ〜。話だけで鼻血垂らしちゃうとか、やばいよぉ〜!」
「うっ、うるさい!」
「喜多だって気になるだろぉ?名前のエッチなこと」
「きっ、き、き…気になる、けど…、けどそういう話は本人のいないところでやるものじゃ…!」
「ええーっ、喜多は名前も交えて下ネタ話したいのぉ?」
「ち、違う!だから、だから俺はだな…!」
「とりあえず鼻血を拭け」

星降に差し出されたティッシュで鼻血を拭う。すると、ノック音が響いた。

「みんなー、着替えた?」
「あ、名前。うん、みんな着替えたよぉ〜。……あ、面白いものが見れるから入ってきなよぉ」
「面白いもの?」


ガチャリと音がして、名前が部室内に入ってくる。
西野空が言う面白いものとは、きっと鼻血を垂らした俺の事だろう。ああ、こんな姿…彼女には見せられない。しかも鼻血が出た理由が理由だから、合わせる顔がない。
ティッシュを鼻に押し当てながら俯くと、名前は部室の中に入ったみたいで、西野空と話をしていた。


「面白いものって、何?」
「ああ、それはねぇ…喜多に聞いてみなよぉ」
「喜多くん?」
「っ、名前…こ、来ないでくれ」
「どうしたの?口元を押さえて…気分が悪…っ、喜多くん、鼻血!」
「っ…!」


目の前にいる名前は、ひどく驚いた表情になる。ああ、好きな人にこんな姿を見られるなんて…、ああ、最悪だ…。
すると、名前が俺のティッシュを取り上げて、また新しいティッシュで鼻の周りについた血を拭ってくれた。


「名前…」
「大丈夫?どこかで打ったの?すごい血だね…、ほら、そこの椅子に座って」


純粋に心配してくれる名前にときめきながら、後ろめたさも感じて、俺は視線を下にずらした。
すると、名前の胸とジャージに目がいってしまった。慌てて目をそらそうとした時、脳裏に西野空の言葉が蘇る。





「ジャージ姿もやばいよね〜。お尻がぷりぷりで、胸もエロくてまさに眼福ってかんじぃ」




ブッ!



「え、え、喜多くん!?」
「あっははははははは」


真っ赤になる視界の端に見えたのは、名前の驚いた表情と、西野空の腹の立つ笑顔だった。




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