俺は同級生でサッカー部のマネージャーの苗字が好きだ。らしくないって分かってるけど、苗字を見るだけで顔が赤くなるし、胸がぎゅって痛くなる。
だけど、多分、…苗字は彼女の幼馴染の速水が好き。ちなみに速水は俺の友達。……すっげぇ複雑。

苗字は速水と一緒にいる時が一番楽しそうだ。ずっと、彼女を見てきたからそのくらい馬鹿な俺でも知ってる。
だから、2人の間に入る事だって出来ないし、入ろうとも思わない。苦しい苦しい、胸が痛い。…恋って、こんなに苦しいもんなんだな。


今日も、部活が終わると苗字が俺たちの着替えている部屋の前で速水を待っている。家も近い彼らは、毎日こうして一緒に帰っている。…そして、速水が決まってある行動をとる。


「あ、あの…浜野くん、一緒に帰りませんか?…あ、名前も一緒、ですけど…」
「あ…ごめん、今日は借りてたCD返しに行かないといけなくてさー。ごめんな?」
「…いえ、大丈夫ですよ。じゃあ、俺はこれで。また明日」
「おう、じゃーな」


パタン、と音を立てて閉まるドア。俺はため息をついた。
CDを借りてるのはウソじゃないけど、まだ返さないといけない日まで期限は十分ある。俺が断った理由はただ一つ。…彼女のためだ。
苗字にとって、俺なんかただのお邪魔虫でしかないだろう。嫌われたくないし、二人の仲良さそうな姿を間近で見たくないし…。…はぁ、俺って弱いな。












「はぁ…やっぱり今日もか」
「…まあ、CD返しに行くのなら仕方ないですよ。また明日があります、頑張りましょう」
「……でもさ鶴正、こう何度も断られちゃ…さすがにヘコむよ…」
「…うーん」


こんにちは、速水鶴正です。隣にいる苗字名前の幼馴染であり、恋の相談相手です。
まず最初に言っておくと、彼女の恋焦がれている浜野くんと名前は両思いです。だけど、彼らの関係は一向に前進しません。その理由も分かっています。…彼女と彼がヘタレなせい、そして…少しだけですが、俺のせいでもあります。

だけど、俺は幼馴染を邪険に扱うことも当然できません。なので、色々行動してはいるのですが、浜野くんは誤解をしていて全く効果なしです。
ですが正直、ここまでヤキモキされてはさすがの俺も少しだけイライラします。なので、もっと大胆に行動に出てみようかな、と思います。











放課後の教室。今日はサッカー部はお休みだから、鶴正と帰ろうと思ったんだけど…何か用事があるらしくって、私は教室で待ちぼうけ。
あーあ、今日は部活がないから浜野くんのサッカーしてる姿見られなかったな。…浜野くんは、私の好きな人。元気で優しくてかっこよくて…、彼のことを想うだけで顔が熱くなってドキドキしちゃう。
鶴正に協力してもらって、お近づきになるために頑張ってるんだけど、中々上手く行かない。どうしたらいいのかな?

すると、ガラリと教室のドアが開いた。入ってきたのは鶴正。普段はあまり見ることのできない何かを含んだ笑みを口元に貼り付けて、私の方へ向かってくる。


「お待たせしました」
「んーん、待ってないよ。じゃあ帰ろっ「あ、もう少し待ってください」へ?」


鶴正はそう言うと、携帯を開いて何かを見て、それからまた携帯を閉じる。彼の笑みが深くなった。…一体どうしたんだろう?
すると、いきなり腕を引かれて鶴正に抱きしめられた。…え?


「つ、鶴正?」 ガタン



それは、ほぼ同じタイミングだった。
音のしたほうを向くと、荷物を床に落として固まっている浜野くんがいた。…え、え、え、え…


「は、まの…くん」
「あ…お、俺…あ…。お、お邪魔だったかなー?な、なんて。…っ、…ご、ごめん…っ!」

かなり焦った様子の浜野くんは、荷物もそのままに教室を出て行ってしまった。それと同時に、鶴正がため息をつきながら私を解放した。


「つ、鶴正…?」
「はぁ、ここで我を忘れて俺に飛び掛ってくれればよかったんですが…。まあ、いいです」
「?」
「…名前、何してるんですか?追いかけなくていいんですか?」
「へ…」
「あの荷物、届けに行ってあげたら良いじゃないですか。…それと、誤解されたままでいいんですか?」
「誤解って…あ、」

そ、そうか。私、鶴正に抱きしめられていたから…誤解されたかもしれないんだよね…!も、もしそうなら…ど、どうしよう…!
…駄目だ駄目だ。あれこれ考えていても仕方ないよね…!と、とにかく浜野くんを追いかけないと…!


「ごめん鶴正、先帰ってて!」
「頑張ってくださいね」


鶴正に応援されて、私は放置された荷物を持って、大好きな彼の背を追いかけた。






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