今日もぐっすり寝ているぐだらーこと苗字名前。その寝顔はとても可愛らしくて、見るものを和ませていたのだが…。
迫り来る下校時間、だが机に張り付いたまま起きない名前に、雷門イレブンは手を焼いていた。


「なんで今日は起きないんだ、半田」
「お、俺に聞かれてもな…」
「お前名前の保護者だろ?」
「ほ、保護者って…」


半田真一はううーんと頭を悩ませながら、眠る名前を見る。確かに今日は異常だ。いつもなら眠った直後でない限り、名前は揺すればすぐに起きる。だけど、今日は眠り始めてから何時間も経ったのに、揺すっても名前を呼んでも何をしても起きない。おかしいな。

半田はもう一度名前に近寄り、少し強い力で彼女の体を揺らした。…反応なし。
お手上げといった感じで肩をすくめて見せれば、雷門イレブンの肩はガクリと下がった。


…そんな中、名前に近づくシニカルな笑みを浮かべた男子生徒がいた。
彼…松野空介は片手に棒付きのカラフルなキャンディーを持って、名前がへばりついている机の前に座った。そして彼女を覗き込むようにして、棒付きキャンディーを見せびらかすかのように上下に振る。


「名前〜、起きたらご褒美にこれあげるよ〜」
「物でつるのかよ!」
「何?文句あるの半田」
「いえありません」
「(半田(先輩)、弱〜…)」


だが、マックスの物で釣る作戦にも動じない名前。「僕にも駄目みたい」と言いながら、棒付きキャンディーを名前の制服のポケットに突っ込んで、彼女から離れるマックス。
彼が駄目なのだとしたら、名前の保護者はあと一人…なのだが…


「染岡、いつ委員会終わるんだよ…」
「まあアイツ文化祭実行委員だから、この時期は忙しいんだろ」
「でも半田でもマックスでも駄目だったんだぞ?染岡にできるのか?」
「ううーん…」


何にせよ、彼女を起こさないと下校できない。無理矢理机から剥がしてもいいのだが、そんな事をすれば彼女の機嫌が荒れ模様になることは簡単に予想できる。だから、できるだけ優しく、普通の方法で起こさなくてはならないのだ。
雷門イレブンみんなが頭を悩ませている中、名前の寝息の音だけが部室に響いた。


すると部室のドアが開く。入ってきたのは染岡だった。
彼は入ってくるなり、制服姿の雷門イレブンの皆の姿を見てため息をついた。そして「間に合わなかったか…」と漏らす。



「お疲れ染岡」
「…ったく、話長すぎんだよあの委員長…。それで、もう戸締りすんのか?」
「あ、ああ…それなんだけどさ…」
「あ?…おいおい、名前まだ寝てんのか」


部室内にある机に張り付いて寝ている名前を見つけた染岡は、ため息混じりに彼女に近寄る。
そしてその体を優しく揺すり、「名前」と一声呼びかけた。そんな起こし方じゃ駄目だ、と半田が声をかけようとした瞬間だった。

名前の体がむくりと起き上がったのだ。



「ん…」
「え、えええええええ!!!????」
「半田…うるさいよ…」
「ご、ごめん…、で、でも…ええええ?」
「?どうしたんだ半田、お前おかしいぞ」
「半田がおかしいのは前からでしょ」
「ん…」


名前は自分のカバンを持って、覚束ない足取りで染岡のもとまで歩き、彼の右手を掴んだ。



「名前、待たせてごめんな」
「ん、いいよ。お疲れ様」
「ああ」
「ちょっと待て、何で名前…俺たちが起こした時には起きなかったのに、染岡だと起きたんだ?」
「へ?」
「名前は起こされてたことにも気付いていなかったみたいだね…」
「んー…うん、染岡を待ってたから?」
「は?」
「…ああ、そういうことか」

なにやら染岡が納得したように頷いたので、彼のほうを向く。すると染岡は説明を始めた。


「委員会に行く前に名前と約束したんだよ。部室で良い子で待ってるんだぞって」
「つ、つまり…染岡を待ってたから染岡が来るまで起きなかったってわけか?」
「それを無意識でってすごいねぇ…」


半田とマックスは少しだけ呆れたようにぐだらーを見つめて、それから少しだけ笑みを零した。







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