8時10分、サッカー部の朝練が無い平日の朝。私は曲がり角で息を整える。左手の腕時計で時刻を確認して、それからゆっくりと足を進めた。


平日の部活がない8時過ぎ、俺は少しだけ緊張しながら通学路を歩く。携帯の画面で時刻を確認して、それから少しだけ期待しながら歩いた。


「倉間!おはよう!」
ああ、普通に挨拶できていただろうか?声は上擦っていなかったかな?いつも通りの時間にやってきた倉間を見て、胸は躍る。



「倉間!おはよう!」
来た。俺は緊張したけど、平静を装って曲がり角からやってきた苗字を見る。「はよ」…素っ気無い挨拶が口から零れ出た。



「はよ」
そう言って足を進める倉間に、少しだけ悲しくなる。だけど私はそれを顔に出さずに倉間の少し後ろについて歩き始める。隣を歩くなんて、できない。



苗字は俺の少し後ろで歩いている。少しだけ残念に思ったが、そんなこと口に出さない。ああ、素直じゃない自分。だからコイツとずっとこんな調子なんだ。


少しだけ無言が続く。ああ、何を話そうか?やっぱり共通の話題であるサッカー部のことを話したらいいのかな?…あ、そういえば…。昨日の放課後に倉間と話していた女の子は誰なんだろう?


無言の空間、気恥ずかしくも気まずくもある。…何か話題を出したほうがいいのか?…でも、何話したら良いんだよ。…こういう時南沢さんなら上手く話題を出せる…、あれそういえば…昨日コイツ、南沢さんと楽しそうに何か話してたよな…?


どうしようどうしよう。昨日南沢さんに「もう少し積極的になれよ」と言われたけど、まったくその通りだ。恥ずかしくて頭がぐるぐるになって、ああもう!こんな自分が本当に嫌だよ!


南沢さんはかっこいいし頭もいいしサッカーも上手いし、性格…はそんなによくはないけど、モテる要素はてんこ盛り。それに比べて俺は…。はあ。…こいつも、南沢さんが好きなのかな…


倉間にバレないように、彼の顔を盗み見る。…ああ、やっぱりかっこいい。倉間を見てるだけで、胸がドキドキして顔が熱くなってくる。う、わ…今絶対私顔真っ赤だよ…恥ずかしいなあ…バレないようにしないと…!


苗字は…可愛いからモテる。実際、こいつが告白されているトコもこの目で見たことがある(あの時はマジで腹立ったな)でも、誰とも付き合ったことが無いらしい。もしかしたら、好きな人がいるのかもしれない。…それが南沢さんだったら…?俺の口から自然とため息が出る。


「はあ…」隣の倉間から漏れたため息に、私はビクリと反応する。ああ、やっぱり私なんかと一緒に学校に行きたくないよね…私って不細工だし、何もとりえがないし、倉間の隣にいるなんておこがましいにも程があるよね…!…私は彼の名前を呼んだ。


「く、倉間…!私用事があるの!だからごめん、先に行くね!」そう一気に捲し立てて、走り出した苗字。あっという間の出来事に、俺は少しの間呆けていたが、すぐに我に返った。それと同時に広がるのは、少しの悲しみ、胸の痛み。…なんだよ、俺マジ女々しい。


一気に走ってもう校門の前についた。息を整えて後ろを振り返る。当然、倉間は追ってきてはいなかった。良かったのか悪かったのか、とりあえず息を整えた私は落ち着ける場所を探しに向かった。


学校についた。当然苗字の姿は校門前にはない。とりあえず教室に行ってもすることがないので、俺は部室塔へ向かう。あーあ、俺もいい加減にしないとな。…とりあえず、話くらいはまともにしないとな…。


部室のベンチに座って、頭を抱える。…ああ、でもこのままじゃいけないよね…。倉間が好き。この気持ち、諦めることなんてできない。踏み出さなければ…。せめて、楽しくお話がしたいなあ…。


部室の電気がついていた。おーおー朝から練習ご苦労さん。


部室のドアが開く。ふとそちらに視線を向けると…。





恋するバンビーナ


ほら、繋がったよ





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