年上に憧れたり年下のことが好きになったり


もちろん、同級生を好きになるのだって…苦しくなったり切なくなったりするけど、俺は年齢が違う人を好きになるほうが苦しいと思う。こう思うのは、きっと経験の違いだと思う。俺は現在進行形で同年代ではない人に恋をしているから、そう思うだけであって、立場が違ったら別のことを言っているかもしれない。故に今から話すことは自分本位な考えでしかないことを頭に入れておいてもらいたい。

話を戻すけど、どうして俺がそう思うのかというと、そこには年齢という壁が存在するからだ。
果たして自分が恋愛対象なのか、自分にとっては恋愛対象だが、相手にとっては?

ただの弟に見えるかもしれない、優しいお兄ちゃんにしか見えないかもしれない。そうとしか思っていない対象に告白されるのは、気持ちが悪いだろう?
だから俺は怖い。あの人に想いを伝えることが、怖くて怖くてたまらなかった。



俺の好きな人は、近所の高校生の姉ちゃん。
自分が幼い頃からよく面倒を見てくれて、これは母親から聞いたのだけれど、赤ん坊の俺を小さい身体で背負って公園まで連れて遊びに行ったり、俺の家に来ては何時間も遊んで行ったりと…とにかく年下の面倒をみたがるおませな子だったらしい。

彼女は今でも、俺を見ると嬉しそうに駆け寄って頭を撫でてくれる。
嫌ではないが…内心複雑だ。俺はあの頃とは違う。姉ちゃんにとっては、あの頃のままなのかもしれないけど、それは違う。

現に、あの頃は意識もしていなかった姉ちゃんのことを意識し始めた。女性として、だ。
だけど姉ちゃんは違う。あの頃と何も変わっていない。
俺に平気で抱きつくし、頭撫でるし、いちいち世話を焼いてくる。先ほども言ったように構ってくれるのは嬉しいけど、子供扱いしないでほしいんだ、とにかく。



姉ちゃんに、男だと思ってほしい。
だけど、それは本当に正しい考えなのだろうか。

もし俺が姉ちゃんに告白をしたとするだろう?で、…(考えたくないけど)フられる。
そうしたら、どうなる?次の日から姉ちゃんは俺のことを無視するかもしれない。いや、もしかすると今まで通りの態度を続けるかもしれない。だけど、それは俺にとっても姉ちゃんにとっても辛いだろう。…どう転んでも良いことがない。お先真っ暗というやつだ。


だけど、俺は姉ちゃんに男として扱ってほしかった。だって、俺は姉ちゃんのことが異性として好きだから。…だから、俺は考えた。さりげなく、だけど精一杯のわざとらしい悪戯を。





姉ちゃんの買い物に付き合った、その帰り道。


「そういえば典ちゃん、部活のみんなと仲良くしてる?」
「あ?…まあな。名前は?部活なんだっけ」
「……、…あ、部活?吹奏楽だよ」
「楽器とか吹くやつだよな。で?名前は何の楽器やってんだ?」
「………、が、楽器は…クラリネット」
「クラリネットって…あの、壊れちゃったーみたいな歌があるやつだよな?…お嬢様っぽい楽器だな、名前が吹いてるの想像できない」
「…………、………ね、ねえ典ちゃん」
「…なんだ?」
「な、なんで今日は、ずっと…呼び捨てで呼ぶの?」


やっと触れてくれた。
悪戯、というのは姉ちゃんをさりげなく名前、と名前で呼ぶことだ。
いつもは姉ちゃんと呼んでいるのを名前に変えることによって、どんな反応をするのかを見てみたかったのだ。

成功したかもしれない。
姉ちゃんは俺には甘いから、こんなことで怒ったりなんてしない。ただ、いつもとは違う、ということを意識してもらえるだけでいいのだ。


「何か問題でもあるのか?」
「…べ、別に、ないけど」
「……」
「……」
「……名前…」
「…っ!や、やっぱ駄目だよ!典ちゃん!」

急に焦り始める姉ちゃんに、俺は少しだけ冷や汗をかく。…やり過ぎちまった「典ちゃんに名前で呼ばれたら、恥ずかしくって照れちゃうよ!」…!!?
そう言って、顔を真っ赤にして照れ始める姉ちゃん、いや、名前に俺の心臓はドキリと跳ねる。

え、…それって、つまり…

そういう、ことですか?

何にせよ、照れまくっている姉ちゃんに真相を聞くのは、もう少し後になりそうだ





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