俺の彼女はとてもテキトウな人間だ。
デートには平気で遅刻してくるし、たまにすっぽかす(理由を問い詰めたら、笑いながら忘れてた〜と一言)、俺以外の男と平気で手を繋ぐし、抱きつくし…。だけどこれらを彼女は素でやっているから、余計質が悪い。

だけど俺はそんな彼女のことを怒ったことは一度もない。
そういうフレンドリーでどこか抜けている所が、可愛いと思う。…ああ、わかっている。俺も重症なんだ。…だけど、俺にも一つだけ許せないことがあったみたいだ。



それは、ついこの間のことだった。



名前とデートをすることになり、俺は駅前でドキドキしながら彼女の到着を今か今かと待っていた。
だけど、待ち合わせ時間になっても彼女は来ない。まあこれはいつものことなので、少し待ってみよう…。…感覚がおかしいのは分かっている。慣れって怖いな。

それから30分ほど待ったが、来ない。俺はいつもそこで彼女にメールをする。それからもう30分ほど待ったが、返信は来ない。…これは、寝ているのかもしれないな…。そう思い、俺はため息を一つ。…今日のデートは中止だ。


パタンと携帯をたたんで、俺は歩き始めた。せっかく街まで出てきたのだから、今日は一人で買い物でもしよう。
そう思って駅の近くの服屋に入ったときだった。ガラス越しに彼女が走っていくのが見えた。…!

俺は急いで彼女を追いかけようと、して…俺は思わず足を止めてしまった。



「はあ、はあ…間に合ったー!」
「おっ時間丁度だな、名前」
「おはよぉ〜」


駅前にいたのは、俺の彼女の名前と…同じ部活仲間の隼総と西野空だった。…え、…え?
あまりにも予想外な出来事に、俺は固まってしまう。…こ、これは…どういうことだ?


「いやー、それにしても今日のカラオケ楽しみだね!テンションあがっちゃうよー!」
「フリータイムね〜、7時間とか余裕〜」
「ドリンクバー付けような」
「あっ、いいねえ!ポテチとかも頼もうね〜」


カラオケ?7時間あいつらと二人きり…ということか?…い、いや…それよりも…
待ち合わせ時間丁度に現れた名前、俺との約束を忘れて他の男と遊びに行く。…さすがの俺でも、堪忍袋の緒が切れそうだ。…いや、切れた。
俺はすぐに談笑している三人のもとまで歩いて行き、彼女の腕を掴む。すると、西野空がいつもの間延びしたような声で「喜多じゃ〜ん、どうしたのぉ?」と聞いてきた、が答えない。

そのまま無理矢理彼女の手を引っ張ってその場を後にする。西野空がなにやら文句を言っていたが、今はそれどころではない。
駅の裏にある公園まで彼女を連れて行って、腕を離す。すると、彼女は困惑したように俺に「どうしたの?」と聞いてきた。どうしたもこうしたもない。


「西野空たちと約束していたのか」
「え、う、うん…そうだけど…」
「いつ」
「昨日…だけど…、本当にどうしたの、喜多」

昨日…。俺が約束したのは、一週間前だ。…忘れていたのか?…でも、それにしてもだ。
俺は相当怖い顔をしていたのだろう。名前が「喜多怖いよ、本当にどうしたの?」と言う。だけど俺の怒りは収まりそうになかった。


「一週間前、約束したよな。メールで、今日デートしようって」
「え、え…」

彼女はすぐに携帯を取り出し、そしてすぐにメール履歴を見る。そして、すぐに顔が青ざめた。それから、新着メールも確認したのだろう…更に顔を青くした彼女は、俺を申し訳なさそうに見てくる。


「き、喜多…あの、ね…ごめん、忘れてた…」
「…何度目だ、これで。俺はずっと我慢してるんだぞ?」
「……ごめん」
「何で俺のデートは遅刻するのに、隼総たちとの約束の時には時間通りに来るんだ。…時々わからなくなる、名前が俺のこと…本当に好きなのか」
「す、好きだよ!喜多のこと、大好きだよ!」
「…いつも口だけじゃないか」
「…で、っも…ほんとに、すきなんだよぉ…」

段々と嗚咽混じりになる彼女の言葉。すると俺の良心が痛む。…はあ、俺はつくづく甘い。…だけど、今日は折れないからな。
俺はあからさまにため息をつき、彼女に背を向けた。そしてそのまま歩き始める。


「き、きた…ごめん、ごめんね…、だ、だから…行っちゃやだよ…!」
「……」
「今度から、ちゃんと予定表にも書くし、遅刻しないように目覚ましもいっぱいかけるから…、お願い、きたあ…!」
「……」
「ふぅっ、…ううっ、喜多、きた…」
「…」
「んっ…」


彼女の唇を塞ぎ、名前の細い体を俺の腕の中に閉じ込めた。




普段優しい人ほど怒ると…
(身にしみて痛感いたしました)
(今度から気をつけるんだぞ?)
(…はい)





「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -