「彼氏が私より細いとです、名前です…」


なーんて、某ホスト芸能人の真似をしてみたりなんかして。こんにちは、苗字名前です。
私には彼氏がいます。成績優秀で運動神経も抜群(サッカー部イチの俊足とか言われてる)性格も…少しネガティブだけど他人思いで優しい。顔立ちは可愛い系だけど、キリっとした時なんて男らしくてかっこいいの。まあとにかくベタ惚れってわけなんだけど、そんなステキな彼氏に不満もある。先にあげたのが、ソレだ。

男にしては細すぎる我が彼氏、速水鶴正。ひょろひょろという言葉が日本で一番似合うのではないのかというくらいひょろひょろな我が彼氏速水鶴正。…ええ、嫉妬ですよ!女の醜い嫉妬ですよ!自覚してますよ。と に か く だ

私は彼に太ってもらおうと思う。もちろん、普通程度にだ。
そういうわけで、彼を家に呼んで手料理を振舞う。コレステロールの多いメニューをねっ!



「作ってくれたのは嬉しいですけど…、こんな量俺と名前で食べきれるわけないじゃないですかあ」
「え、私は食べないよ。鶴正のためだけに作ったんだから」
「拷問ですよお!」


そう言いながらも手をつけてくれる鶴正はとても優しいと思う。…だけど、口に含んで一言。


「油っぽい…」


でしょうね!だってわざと油多めにしたんだもん、その野菜炒め(肉多め。肉炒めと言ってもおかしくはないだろう)
でも料理は得意だし味は美味しいと思うんだけどな。食べて食べて、と…期待の篭ったまなざしで鶴正を見るが、彼は持っていた箸をテーブルの上に置いてしまった。


「俺、油っぽいの苦手なんですよ…」
「美味しくないの…?」
「…油系のものは、食べたくありません…」


だからそんなに細いのか、なんて納得したけど正直それ所じゃない。
私は料理が得意なのだ。だから、途中で手をつけられないなんて…完食してくれないことに怒って、立ち上がった。理不尽だと思うけど、でも今は鶴正への怒りが勝ってしまっている。鶴正が少しだけ驚いたように私を見た。


「せっかく人が頑張って作ったのに、食べたくない?」
「…だって油系嫌いなんです」
「だからって、彼女が作ったものを、食べない?」
「…元々無理矢理連れてきたのは名前のほうじゃないですか、なんで無理矢理つれてこられた俺が怒られなくちゃいけないんですか!」

少しだけ語気が荒くなる鶴正。臆病な彼が私の前でだからこそ、これだけ感情をあらわにする。少しだけ嬉しいけどそんなの今は関係ない!
私の頭は得意なことが否定されたのと鶴正の体格への嫉妬でいっぱいいっぱいだった。ワケもわからず怒鳴り散らす。

すると、私の様子を不思議に思ったのか…鶴正が怒るのをやめて私のほうを訝しげに見てきた。


「今日、おかしいですよ?何かあったんですか…?」
「別にっ、なんでもないっ!」
「いや…なんでもない事はないでしょう…。変ですよ、今日の名前」
「なんでもないっ、なんでもな…!」


ぎゅっと、私を包み込んだ鶴正に…私の言葉は吸い込まれていった。


「名前」

優しく、諭すようなそんな呼び方に…そのぬくもりに、私は縋り付いた。
そして…一つ一つ搾り出すように、言葉を発する」


「あのね、鶴正が羨ましかったの」
「俺が…羨ましい?」
「それとね、自分が…嫌だったの」
「…?」
「…鶴正は、私より細いから…、私は、太いから…、彼女が彼氏より太いのはイヤだって思って、」
「だから、俺に油っこいものを食べさせて、太らせようとした…ということですか?」
「う、うん…」


私が肯定すると、鶴正は「馬鹿ですね…」と言って私を更に抱きしめてきた。


「俺はそんなこと気にしませんよ」
「でも、私が気にするの…」
「…じゃあ、」


そう言って、今度は私の唇にキスを一つ落として、笑う。


「俺が細いというのが理由で、キスは出来ませんか?出来るでしょう」
「つ、鶴正…」
「俺が細いのが理由で、抱きしめることは出来ませんか?…出来るでしょう」
「…う、ん」
「ほら、何も問題はない。だから、大丈夫なんですよ」


そう言って私から手を放す鶴正に、私の心臓はなりっぱなしだ。
彼は料理の置かれたテーブルに再び向かい、置いたばかりの箸を手に取った。そして、手をつけたまま放置されていた野菜炒め(という名の肉炒め)を食べ始めた。


「つ、鶴正…無理しないで!」
「…せっかく俺のために作ってくれたんですから。…ほら、名前も一緒に食べましょう」
「う、うん…!」


口に含んだてんぷらは、やっぱり油っこかった。





結論!私の彼氏はとてもとてもかっこよかった!




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