体育の時間に男女ペアでフォークダンスをすることになった。
ペアは好きなように組んでいいらしい。

全く困ったものだ。この年頃の子は多感な子が多い。まあ、簡単に言うと思春期真っ只中なのだ。
いきなり異性と組めといわれても、よくわからない照れを発動してしまい、すぐに行動に移せない。ほら、今だって…。

女子の塊と男子の塊が互いに互いの様子を窺っている状態だ。
こんなことになることくらい想像しろよ、クジでも作って引かせておけば良かったんだよ。…まあ、クジならクジで文句が出ただろうけどね!

…まあ確かに、大人しめの子や男子のことが嫌いな子とかには難しいのかもしれない、けど。


ん?お前はさっさと動かないのか?
…だって今ここで最初に動いてみてよ、「アイツ男好きなのかよー」みたいな目で見られても嫌じゃん。
ああ、そうよそうよ。好きに言ったらいいよ!いくら偉そうなことを言ったって、私だってその辺の女子と変わらない思考の持ち主なんだから。

と、一人で自問自答していたら、体育座りしていた私に影がかかる。
顔をあげると、めちゃくちゃ眩しい笑顔で浜野が私の事を見下ろしていた。


「苗字、一緒に組もうぜ!」
「浜野…」


浜野は同じ部活の友人。見ての通り明るい。
彼は周りの目を気にしないタイプなので、こうして何も考えずに声をかけてきたのか。

まあ、別に私も誰かと組みたかったわけじゃないし、こうして組んでほしいと頼まれたので、彼の手を取り立ち上がろうとした時、物凄い足音がこちらに迫ってくる音がした。


「ちょ、ちょっと待ってくださいよお!」
「速水?どしたの?」
「どしたの?じゃないですよっ!お、俺は苗字さんしか頼めないんです!苗字さん以外の女子とは怖くて話すことなんて出来ないし…」


走ってきたのは速水だった。とても焦っている様子だ。
確かに、彼の言う通り…速水が自分以外の女子と話しているところを見たことが無い気がする。


「は、浜野は他の女子に頼めるかもしれないけど…俺には苗字さんしかいないんですっ!」
「えー、そう言われてもなー。俺だって苗字と組みたいし…」


速水の告白紛いの言葉に驚きながら、二人の討論を見守る。
周りを見ると、浜野速水に押されて続々とペアが出来上がってきていた。あーあ、早く作らないとなあ、ペア。

私は別に誰でも良いんだけどなあ…。あーあ、面倒くさいことになってきた。え?ドライすぎる?仕方ないじゃん、性格だよ、性格。
すると、視線を感じて振り返る。…あ。


「倉間」
「…おい、そいつらどうしたんだよ」
「いやあ…、奪い合いされちゃってる、みたいな?」
「…はあ、面倒くせぇな」
「まったくだ」


私たちを見ていたのは倉間だった。
彼は呆れたように浜野速水を見て、ため息をつく。…あれ、そういえば。


「倉間はペアは出来たの?」
「いや、まだ…だけど」


少しだけ頬を赤くした倉間を疑問に思いながら、私はチラリと浜野速水を見る。
…うーん、まだ終わりそうに無い。そして、ペアを組み終わっていない男女のほうが少なくなってきている。…あーあ、面倒くさい。


「倉間、ペア組もう」
「は?いいのかよ」
「だって…、あんまり目立ちたくないし」
「(もう遅いだろ…)はあ」
「じゃあ決まりね」
「ちょ!お、おい…っ!」


倉間の手を掴み、浜野速水から離れる。
普段から仲の良い二人の口論が段々ヒートアップするのを遠目で見物しながら、体育の先生から配られたフォークダンスの踊り方について書かれたプリントを熟読する。…踊れるかなあ。



お手をどうぞ
(あ、あれ?苗字は?)
(…あ!く、倉間と踊ってます…!い、いつの間に…!)
(おいお前ら)
(あ、先生…)
(男子が2人多くてな、悪いんだが二人で踊ってくれないか?)
(…え)
(だ、男子二人でフォークダンスって…痛すぎますよお…っ)




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