私は本日何度目か分からない舌打ちをした。


お日さま園の庭で水をかけあって遊ぶ名前と晴矢、そしてヒロト。
こんな暑い日に外へ出るなんて、全くどうかしている…そう思っていた筈なのに、今はあの二人が羨ましくて仕方がない。

そんな自分にもイライラするし、二人と楽しそうに遊ぶ名前にもイライラするし、もちろん晴矢とヒロトにもイライラするし…。
イライラが膨れ上がり、気分が悪い。ガシガシと頭を掻くと同時に、楽しそうな名前の笑い声が聞こえてきた。


「(そうだ、アイスを買いに行こう…)」

好きなものを食べれば幾分か気持ちは落ち着くだろうし、…とりあえず、この空間から抜け出したかった。
私は立ち上がり、自分の部屋から財布を取って、それから玄関に向かう。…すると後ろから誰かが走ってこちらに向かってくる音がする。何気なく振り返ると、そこにいたのは肩で息をする名前の姿が。


「名前…?」
「ふ、風介…どこにいくの?」
「何処って、コンビニだけど」
「私も行っていい?」
「…別に、構わないけど」
「うん!じゃあ私、財布を…」
「面倒だから立て替えてあげるよ、帰ってきたらまた払って」
「そっか、ありがとう。じゃあ行こうか」


靴をはいた名前はピタリと私の隣に並んで歩き始める。
コンビニまでの間、二人だけの空間。…少しだけドキドキしてしまい、いつも以上に口数が少なくなってしまう。

だけど、そんな私のことを彼女はちゃんと分かっていてくれて。気にせずに接してくれる。一緒にいてとても安心できるから、私は彼女に惹かれたんだ。



そんなこんなでコンビニに着いて、私はお目当てのアイスコーナーに向かう。
私はバニラのアイスを選んでカゴに入れる、名前はアイスボックスをカゴに入れた。

お金を払ってコンビニを出る。暑くて、道中アイスが溶けてはいけないので、歩きながら食べることになった。
美味しそうにアイスを食べる名前を見ながら、私は思い出す。


「そういえば…水遊びは良かったのかい?」
「…え?あ、うん。風介がどこか行くのが見えたから、どうしたのかなって…」
「そう…」


名前が私を追いかけてきてくれたのはとても嬉しかったのだが、…でも。
ぎゅっとバニラアイスの棒を握り締める。何故かまた、あのイライラが蘇ってくる。多分きっと、思い出したからだろう。


「名前は、なんで私を追いかけてきたんだ?」
「…え?」
「楽しそうに遊んでいればよかったじゃないか、私なんかと一緒にいるより楽しいだろう…」
「風介…?」


ああ、やってしまった。困らせてしまった。優しい優しい彼女を、自分の醜い嫉妬のせいで、困らせてしまった。
私は立ち止まり俯く。すると名前が私の右手を優しく握ってきた。


「名前…?」
「私は風介と一緒にいたいと思ってついてきたの、…迷惑、だった?」
「…、ちがう、よ…迷惑なんかじゃ、ない…」
「そう?ふふっ、それなら良かった」


笑いながらそう言って、そして私の右手を握りながら歩く名前に、私の心は次第に晴れやかなものになっていく。
やはり彼女はすごい。私のことを分かってくれている、私のことを包み込んでくれる。

だからこそ…。



私は彼女の手を握り返し、名前の隣に並ぶ。



「名前、帰ったら私と一緒に話をしないか?君に知ってもらいことがたくさんあるんだ」
「もちろん!風介と一緒にいると楽しいし」
「…ありがとう」










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