びしょびしょになった服を着替えるために、私たちは予定より早く宿舎に帰った。
あの後、倉間はさっさと一人で帰って、私と鶴ちゃんと浜野は坂を上がったところで三国さんに遭遇。少しだけお叱りを受けてしまった(主に私が)

「お前はもう少し女ということを自覚しろ!」

先ほど三国さんに言われた言葉だ。…分かってますよ、先輩。自分が女だってことなんか、十分わかってます。


女だからこんなにドキドキしてるんだよ。
女だから、倉間のことが異性として大好きなんだよ。




濡れたジャージを脱いでハンガーにかける。今日は良いお天気だから、すぐに乾くだろう。
体操服(白の半袖)を着て、下は茜ちゃんがはいてる短パンをはいた。…元気っ子か!
…まあいい。とりあえず、午後の練習の時間が迫っているので一階へ降りた。


「あれ、名前。ジャージはどうしたんだド?」
「あ、天城先輩!いやあ、さっき浜野たちと水遊びしてたらズブ濡れになっちゃって…」
「ああ、なるほど。確かに浜野たちもビショビショだったド」
「先輩今からグランド行くんですよね?一緒に行きましょー!」
「だド」


先輩とグランドへ向かうと、一年生とマネージャーが揃っていた。他のみんなはまだ来ていないみたいだ。
ボールを蹴る一年生たちのほうへ向かっていく先輩を見ながら、葵ちゃんたちのほうへ行くと、水鳥がにやにやしながら近づいてきた。

「で、どうだったんだ?」
「…うーん」
「何かあったんですか?」
「あったといえば、あったけど…」

葵ちゃんたちが私を取り囲むように集まる。私が先ほど起こったことを話したら、茜ちゃんが「激写したかった…」と残念そうに呟いた。


「後でお礼を言いに行くといいですよ、絶対!」
「そ、そっか…。お礼言ってなかったもんね…」
「休憩中にドリンク持っていって、その時に…ってのはどうだ?」
「良いですね!先輩、頑張ってくださいね!」
「う、うん…」
「おっ、噂をすれば何とやらだな」


水鳥の言葉に、私はグランドの前にある坂道を見る。倉間だ…、まだ少しだけ髪の毛が濡れている。
それは良いんだけど…。何故隣にいる南沢さんはニヤニヤと私のほうを見ているのさ。全く、わけが分からない。

部員が全員集まり、円堂監督がお昼のメニューを発表する。どうやら今から、チームに分かれて紅白戦を行うみたいだ。
グランドを走り回る部員達。そろそろドリンクの用意でもしてこようかな。


「葵ちゃん、タオルは玄関にあるからそれをお願い。水鳥は記録してて。あと、茜ちゃん。ドリンク作るの手伝ってもらって良い?」
「うん、いいよ」
「じゃあ解散!」

茜ちゃん葵ちゃんと一緒に宿舎まで戻る。玄関で葵ちゃんとはお別れ。二人で食堂まで行き、ドリンク作りを開始する。
個人で味を変えているから、結構時間がかかる。二人で黙々と作業を続けていると、茜ちゃんが口を開いた。


「名前ちゃん、渡すとき、がんばれ!」
「あー…うん」
「?名前ちゃん、元気ない?」
「…告白まで、あと2日しかないからさ」
「突然は…やっぱり嫌だった?」
「あと2日で倉間と更に仲良くなれるかが問題でして」
「んー…、夜にお部屋行ってみたら?」
「…はい?」


思わず聞き返すと、茜ちゃんはいつものようにほんわかと笑いながらドリンクのキャップを閉めた。


「トランプとか枕投げとか、怪談話とか。名前ちゃんは皆と仲良しだから、お部屋に行っても怒られないと思うよ?」
「あ、ああ…そういうことか」
「?」
「いや、こっちの話ですキニシナイデ」

いや、わかっていますとも。茜ちゃんがそのようなつもりで言ったんじゃないってことは!
自分の不純な思考に嫌気が差していると、茜ちゃんが「終わり」と嬉しそうに言った。私も、慌てて持っていたボトルに蓋をする。

そしてそれらを箱に詰め込んで、私たちは食堂を後にする。



「そろそろ休憩時間だから、名前ちゃん倉間くんとお喋りしないとね」
「うー」
「こっそり写真撮っちゃお」
「えー、勘弁してよー」
「後で焼きまわしてあげるよ?」
「是非ともお願いします」



グランドについた。
それを確認した円堂監督が、みんなに「休憩」と声をかける。


わたし は ドリンク を ソウビ した





20110809



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