昼食の後片付けも終わって、私は急いで支度をして待ち合わせ場所の玄関へ向かった。
上下ジャージにタンクトップ+麦わら帽子な私は、日焼け止めも、もちろん塗りたくってもう準備OK!夏じゃん!たたーたーたーたーたー青いふんふーん♪

すると、浜野たちはもうすでに玄関に集まっていたみたいで。「遅れてごめんごめん」と言いながら、彼らのもとへ駆け寄った。


「あ、名前麦わら帽子じゃん可愛いー」
「あんら!ありがとざます海士さん」
「名前、キャラ変ですよ…」
「……」

浜野速水と話していると、倉間がじっとこちらを見ていた。
その視線が物凄く気になって、私は倉間におそるおそる聞いてみることにした。


「な、何か?」
「…いや、別に。つーかさっさと行こうぜ」
「倉間はせっかちだなー、まあ確かに時間無くなるし、出発しよー」

私たちは浜野を先頭に、合宿所を飛び出した。
宿舎の傍にある坂を下りて、田んぼのあぜ道を通り、そして少しだけ急な坂道を上がる。するとそこにはこじんまりとした神社があった。
なんだか嫌な予感しかしない。隣にいた浜野を見ると、嬉しそうにニコニコ微笑んでいた。…ああ、やっぱり。


「肝試しできるな!」
「(言うと思ったよ…)」
「えええ、嫌ですよぉ!それに、夜中に抜け出したら先生方に何ていわれるか…!」
「じゃあ先生たちに許可貰えばよくね?」
「(えええええ…嫌だなあ…)」
「……。…ムリだろ。獣道だし、夜中じゃ危ないだろ」
「ああ、そっかー…残念」


倉間のもっともな意見に、浜野はガクリとうな垂れる。
私は三人に気付かれないように、ほっと息をつく。肝試しとか、お化けとか、心霊写真とか…そういう類のもの、苦手なんだよなー…。

とりあえず、ここでは遊べそうにないので、私たちはもと来た道を戻ることにした。




「まだ時間あるし、小川で遊ばね?」


浜野の提案で、私たちは宿舎の近くに流れる小川で遊ぶことになった。
靴を脱ぎ、ジャージを折りいざ水へ!最初は嫌がっていた鶴ちゃんも、浜野に引っ張られて冷たい水の中へ!

水をかけあったり、浜野に至っては泳ぎだしたり、魚を素手で捕まえようとしたり、…とにかく楽しんだ。
チラりと倉間を見る。彼は上のジャージを脱ぎ捨てており、昨日の夜と同じタンクトップ姿で浜野に水をかけて遊んでいた。ああ、かっこいい。水も滴る良い男、というか。


「…名前は告白、しないんですか?」
「っ!つ、鶴ちゃん脅かさないでよ!」

いつの間に隣に来ていた、びしょ濡れの速水が名前に聞く。
…告白か。


「水鳥ちゃんたちにね、この合宿の最後の夜に告白しろって」
「が、合宿の?それはまた急ですね」
「だよねえ…、どうしろっての」
「…まあ、大丈夫だとは思いますけど…あ」
「へ?っきゃあ!」


速水がまぬけな声を出したのと同時に、私たち二人に大量の水がかかる。
目を開けると私も鶴ちゃんもびっしょびしょ。そして、どこから見つけてきたのか分からないバケツを持ちながら笑う倉間、ぎゃはぎゃは笑い転げている浜野の姿が見えた。

ふるふると拳が震える。そして私は実行犯と思しき男のもとへ詰め寄る。


「倉間っ!」
「ブッ、余所見してんのが悪いだろ」
「んなわけないだろこのヤロ…っ!」
「!」


目の前の倉間に気をとられ下を気にしてなかったせいで、何かに躓きそのまま前方へ体が傾く。
ヤバイ、下石なのに…!ぎゅっと目を瞑ると、頬に濡れた布の感触。…あれ、これって…

恐る恐る目を開くと、倉間が倒れかけた私を支えてくれていた。し、しかも腕が背中にまわって、こ、これ何て漫画?みたいなシチュエーションだった。い、いやそれよりそれより!

倒れこんだ姿勢のせいか、いつもは同じ高さにある倉間の顔を下から見ることになる。彼は驚いた表情で私を見下ろしていた。


「危なっ…、大丈夫かよ」
「う、う、あ…だ、大丈夫」
「…っ、」


倉間は私を後ろへ押しやると、バシャバシャと音を立てながら川から上がっていった。
そんな彼と入れ替わりで、鶴ちゃんと浜野が心配そうな表情で駆け寄ってくる。


「うわー、大丈夫?」
「…大丈夫じゃ、ない」
「え!?ケガしてんの?」
「…っ」


へなへなと川の中に座り込む。
大丈夫じゃ、ない。抱きしめられるなんて、しかも…最後の倉間の顔…ま、真っ赤、だった。



『じゃあドキドキイベントがあるかもしれませんよ!』



あ、葵ちゃん…これって、ドキドキイベント…だったのかな?





20110809


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