夜。

食事を作るのをサボったので、せめてもの罪滅ぼしとして一人で食器を洗うことにした。
葵ちゃんや茜ちゃん、それに天馬くんや信助くんが手伝ってくれようとしたけど、これは私の罪滅ぼしだから…と断ったのが間違いであった。

食器の量多すぎる!しかも魚を焼いたから後片付けがひじょうに面倒だったのだ。舐めてた、食器洗い、舐めてた!


先ほどからスポンジをごじゅごじゅと泡立てようと揉んでいるのだが、洗剤が安物なのかあまり泡立たない。畜生おばちゃんたちめ!これ何処のメーカーよ!これ何処のメーカーなのよ!


とにかくごしごしと擦っていると、ブッと音が聞こえた。なんだオナラか…誰がオナラしにきたんだよと思い横目で見ると、黒いタンクトップを着た倉間だった。
彼はニヤニヤと笑いながらこちらを見ていた。笑いたいのはこっちだ、人前でオナラなんてして。

彼はこっちに近寄ってくると、「ざまあねえな」と暴言を浴びせる。畜生、泡まみれにしてやんぞ。あ、駄目だ。あんまり泡立ってなかったんだ。
代わりにジト目で睨むと、彼は楽しそうに笑いながら更に私をからかい続ける。すると、彼の髪がぺちゃんこな事に気がついた。


「倉間お風呂入ったの?」
「あ?ああ、今日は二年が最初に入る日だからな」
「髪めちゃくちゃ濡れてるよ」
「すぐ乾くだろ」
「山のほうって夜は寒くなるよ、風邪ひいちゃう…」
「大丈夫だって」
「それならいいけど」


私は皿洗いを再開する。本当はもっと倉間と話したい。だけど、ちょっとムリ!マジムリ!
だって倉間お風呂あがりたてだから良いにおいするし、タンクトップだから露出多いし、見てらんないし、髪もいつもとちょっと違うからなんかドキドキしちゃうし、…あああ、なんか私変態っぽいね!自覚してるよ!

すると倉間が私を覗き込んできた。あまりにも突然だったため、持っていた皿を落としてしまう。


「あ!」
「ちょっ危ねぇ!」

間一髪、倉間が皿を受け止める。


「お前何してんだよ!俺が受け止めなかったら飛び散った破片でケガしてたぞ、お前!」
「ご、ごめん…」
「…はあ、まあ驚かせた俺も悪かったし。…あーあ、仕方ねえから皿洗い手伝ってやるよ。スポンジ貸せよ」

強引にスポンジを取られてしまう。少しだけ手が触れて、ドキリとした。


「く、倉間…?」
「何だよ」
「手伝ってくれるの?」
「悪いか」
「う、ううん…!ありがとう!」
「…さっさと手、動かせ」


頬が熱くなっていくのを感じる。
いつもは意地悪だけど、たまに…優しくしてくれるところが好きなんだ。それに、サッカーをやっている時の真剣な目。誰にでも自分の意見が言える所も、彼の笑顔も、全部全部好き。


二人きりの食堂。
お互い無言だけど、だけど幸せな時間だった。











「…と、いうことがありまして!」
「良かったじゃねーか名前!」
「で、で?その後はどうなったんですか?」
「お茶を入れて、食堂で飲んだんだ。嫌なこと言わなかったし、倉間も言ってこなかったし…なんか、楽しかった」
「素敵…!ところで名前ちゃんはいつ告白するの?」
「え…」


こく‐はく【告白】
[名](スル)

1 秘密にしていたことや心の中で思っていたことを、ありのまま打ち明けること。また、その言葉。「罪を―する」

2 キリスト教で、自己の信仰を公に表明すること。また、自己の罪を神の前で打ち明け、罪の許しを求めること。

(by,yahoo国語辞書)


この場合は、1だろう。秘密にしていたこと(倉間への気持ち)や心の中で思っていたこと(倉間が好き)をありのままに打ち明ける(倉間に)こと。



「え、え、え…告白?む、ムリだよ!ムリ!」
「やってみろよ!中々良い線行ってると思うぞ?」
「私もそう思います!絶対いけますよ!」
「ムリムリ!だって、私が、倉間に、こ、こく…」
「ふふっ、名前ちゃん可愛い…パシャパシャ」
「じゃあ決まりだな!合宿の最後の夜に告白決定だ!」
「ええええー!」




合宿最後の夜まで、あと3日。




20110807

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