「すみませんでした!」


食堂に着くと私はすぐさま三国先輩のもとへ行って頭を下げた。先輩には本当に迷惑をかけてしまった。こんな重い重い私を2階まで運んでくださるなんて…!本当にごめんなさいごめんなさいごめんなさい!

そう言うと三国先輩は困ったように笑いながら私の頭を撫でてくれた。


「気にするな、長旅で疲れていたんだろう。それにお前は重くないぞ?むしろ軽い」
「おいおい三国、それ軽くセクハラ発言だぜ?」
「なっ!?そ、そんなつもりで言ったんじゃない!変なことを言うな車田!…名前、すまないな」
「あははっ、車田先輩にダッシュトレインーっ!」
「うわ今は止めろ!トレー持ってんのが見えねえのか!」
「名前、早くこっちきて盛り付け手伝えー!」


車田先輩にダッシュトレインのごとく突撃しようとしていたら、厨房から水鳥のちょっと怒った声が。
謝らなければならない対象はまだ他にもいるということをやっと思い出せた。

すぐに厨房へ向かうと、味噌汁をお椀によそっている葵ちゃん、お魚とご飯をトレーの上に乗せている(さっき車田先輩が持っていたやつ)茜ちゃん、そして焼いた魚を皿に乗せている水鳥がいた。


私が謝ると、葵ちゃんは先ほどの三国先輩のような優しい言葉をかけてくれた。茜ちゃんも笑顔で「大丈夫だよ」と言ってくれた。天使…天使がおる!
そして水鳥は私にしゃもじと茶碗を渡し、ご飯を盛るように頼む。


「さっきまで先生がやってくれていたんだ、感謝しろよー」
「音無先生何から何まで本当にありがとうございます」
「明日からはバシバシ働いてもらうわよ?」
「うわー、わたくし頑張りますわー」


ご飯をまるまるもりもりしながらもりもりし終えたのを茜ちゃんに手渡していく。
すると全員分トレーに乗せ終えたみたいで、マネージャーもやっとご飯の時間になった。


トレーを持ってうろうろしていると、窓際の席から褐色の手がブンブンと振られている。それと同時に元気な声が私を呼ぶ。

「名前ーっ、一緒に食べよー」
「浜野ぉ!今行くぜっ!」

どうやら浜野が私の席も取っておいてくれたらしい。さすがマブダチだぜ!浜野の隣の席に腰掛ける。左が浜野、右が天城先輩、斜め左が倉間(ちょっと胸が跳ねた)、前が速水、斜め右がエロ沢…げふん南沢さんだった。


「おいお前今失礼なこと思っただろ」
「被害妄想激しすぎますよー先輩ー」
「ちゅーか名前寝すぎ!松風がめちゃくちゃ揺すっても起きなかったんだぜ」
「というかコレ浜野が釣った魚?」
「違う違う!地元のおばちゃんたちが持ってきたんだよ」
「だよねー」
「自給自足かよ」
「いや、地味な献立だからまさかと思いまして」


焼き魚に白ご飯に味噌汁(具はワカメと豆腐)に麦茶。
ご飯は基本的にマネージャーが作るんだよね。で、材料は浜野が言ったように近所のおばちゃんたちが持ってきてくれる。そう、その日何が食べれるかは近所のおばちゃんの気分にかかっているのだ。


「これだけじゃ足りないド…」
「確か米ならまだありましたよ」
「名前、これに盛ってくるド」
「自分で行けよ!」
「名前ー俺もー」
「ガキかよ!」
「さっさと行けよナマケモノ」
「はあ?」
「ナマケモノだろ、掃除サボって料理作るのサボって。つーか涎の痕すげーぞ」
「え、嘘!」
「嘘」
「く、倉間ぁ!」
「ちょっと名前、いきなり机叩かないでくださいよ!味噌汁が飛び跳ねちゃったじゃないですか…!」
「ご、ごめん鶴ちゃん!」
「罰として行ってこいよ、名前。あ、ここにいる全員分な」
「イジメだろこれ、イジメだろ」


結局私を取り囲む席の人全員分のご飯をまるまるもりもりすることになった。ちくせう。
神童くんが手伝ってくれようとしたけど、断った。きっとこれは寝すぎた罰なのだ。




20110807

第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
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