夏…。合宿所に向かうバスの中。
私は隣に座る、自分より頭一つ分大きくなった彼を盗み見ていた。


「何見てんだよ」
「…あ、起きてたんだ。目を瞑ってたから寝てたのかと思った」
「……」

彼は私の右手を取り、指を絡める。この自然な流れに、私もすっかり慣れてしまって同じようにぎゅっと彼の左手に自分の手を絡めた。


「もう一年経つんだね…」
「…ああ、そうだな」
「私ね…夏が大好きだよ」
「…夏が?」
「うん、夏はね…私に大切なものをくれたから」
「……じゃあ、俺もだな」
「……」
「……」
「…っ、あははっ!何この展開、クサすぎる!あはははっ」
「くっ…ははっ、ねぇなコレは」


いきなり二人で爆笑し始めたので、前に座っていた浜野と鶴ちゃんが何事かと振り返ってきた。
倉間がそれをてきとうにあしらって、それから笑うのを止めて「でも…」と話を繋げたので、それを聞くために私も笑うのを止めた。


「事実だけどな」
「……、うん」
「…名前」
「なに?」
「好き」
「…うん」


私は身体を典人のほうへ傾け、目を瞑る。
窓の外には、美しい田園風景と雲一つない澄み切った青空が広がっていた。











20110825


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