お昼の自由時間、マネージャー三人が合宿所から出て行くのを2階の窓から目撃した。
一体何を計画しているのだろう?もう教えてくれても良いんじゃないのか?…なーんて思ってると、女子部屋のドアが勢いよく開いた。


「名前ーっ、あーそーぼーっ!」
「…浜野、ここは女子部屋だよ」
「す、すみません!俺は止めたんですけど…!」

ノックもなしに入ってきた浜野と速水。
浜野の遠慮のなさ(というか、デリカシーの無さ)に若干呆れながら、私は二人を部屋の中に通す。…音無先生もマネ3人組もいないし、別に部屋に入れてもいいよね。

浜野は初めて入る女子部屋をぐるりと見回して「ずるい」と一言。


「え、何で?」
「だってココ、中々広いし綺麗じゃん。それで、五人部屋だろ?羨ましいなー、今日はここで寝たい!」
「は、浜野…それはちょっと…」
「なんだよ、速水だってこっちの方がいいだろ?」
「そ…それはそうですけど」
「何、そんなに酷いの?大部屋は」
「それがさー…網戸ないから虫入りまくりだし、大人数だから熱いし汗くさいし最悪なんだって!」
「へえ…それは大変」


大部屋には何度か入ったことがあるけど、ぐちゃぐちゃに敷かれた布団、てきとうに置かれた荷物、投げ出された洗濯物…、散らばる私物…。
しかも神童くんや南沢さん、鶴ちゃん、三国先輩くらいしか自分の布団を畳まないから、いつもきったない足で布団(もちろん自分のも他人のも)の上を歩いている上で毎日寝ているのだろう…、うわあ。

想像すると確かにキツいものがあった。


すると、窓の外を見ていた浜野が声をあげた。

「あ、倉間」
「!!」

同じように窓の外を見ると、合宿所を出て行く倉間の姿が。


「さっき遊ぼうって誘ったんだけどさ、一人になりたいって断られてさー」
「へ、へえ…」
「……」
「……」
「……名前さ」
「な、何?」
「倉間のこと、好きでしょ?」
「!!」

浜野には絶対に気付かれるわけがないと思っていたのに。何故、何で…?


「だってさ、倉間を見る目…すっげえ優しいよ?」
「…え」

気がつかなかった。…いや、気がつけるわけが無い。
浜野に言われて初めて気付いた。…そっか、私…そんな目をしてるんだ。


「図星?じゃあ俺すごいな!なあ、速水!俺すごい!」
「というか、今更ですよ…」
「え、じゃあ速水知ってたわけ?」
「まあ…」
「ちゅーか、それなら早く仲直りしないとなー名前と倉間」
「…今日、頑張るよ」
「そっか!上手くいくといいな」
「…そうだね」


私は窓の外を見る。
遠くなってゆく彼の背中を見ながら、私は雲ひとつない空を仰いだ。










午後の練習も終わり、夕飯の時間になる。
最後の夕食…ハンバーグを食べていると、円堂監督が立ち上がった。


「今日は最後の夜だし、マネージャーたちの提案で思い出作りに花火をすることになった。夕食を食べ終わったら玄関前に集合してくれよ!」


花火…?も、もしかして…!
すぐに葵ちゃんたちのほうを見ると、ニコリと微笑まれた。すると、ポケットの中の携帯がぶるりと震える。



『先輩、私たちで先輩と倉間先輩が二人きりになれるように動くので、任せてくださいね!頑張ってください!』

葵ちゃんからだった。
彼女たちが言っていた「舞台」とは、花火のことだったのか。…確かに、シチュエーション的にもバッチリだ。


…告白、か。
応援してくれた人や、励ましてくれた友達…そして何より、自分のために。



「(頑張るぞ)」




20110824



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