南沢さんを玄関に引っ張ってきて、私は先ほど倉間に告げられたことを南沢さんに告白した。
すると、南沢さんは少しだけ驚いたような表情をして、「それで?」と聞いてきた。…ん?それで…?

私が首を傾げていると、南沢さんは呆れたようにため息をつく。


「だから…、それからどうなったんだよ」
「…あ」

あの後、倉間はどこかへ行ってしまった。…言い逃げをされた、ということだ。
何だか曖昧になってしまった。これからどうするべきだ?…倉間を探して、私も好きだと告白…するべきなのかな?

云々と悩んでいると、南沢さんが私の頭にぽんっと手を置いた。


「ま、良かったじゃねーか」
「うあ、は、はい…」
「とりあえず、もうすぐ午後練始まるからさっさと着替えて行こうぜ。どうするかは、ゆっくり考えればいいさ」
「分かりました…!あ、あの…先輩」
「何だ?」
「ありがとう、ございました」
「…頑張れよ」


南沢さんは、エロいし内申厨だしエロいけど…。後輩思いで優しい、大好きな先輩だ。
先輩が後押ししてくれなかったら、きっと仲直りすることは出来なかっただろう。…ありがとうございます、先輩。

南沢さんや鶴ちゃんや、マネージャーの皆…色々な人に支えられて、私の恋はようやく色付いてきた。











結局倉間と話す機会もなく、午後練習…夕食、と絶好のタイミングを逃して、消灯時間になってしまった。
というか、倉間自身が私のことを避けていた気がする。そういう私も、倉間を目にしたら何も考えられなくなったというか…とにかく、話しかけれるような状況ではなかった。

とにかくマネージャーの皆に今日起こったことを話しがてら、これからのことを相談してみることにした。


「マジかよ!」
「そっか、だから名前ちゃん、午後練から様子おかしかったんだね」
「それで…どうするんですか?」
「うーん、私も…告白したいんだけどね。なんかさ、いきなり倉間を捕まえて思いを伝えるって…、微妙な気がして」
「確かになぁ…。せっかくだから、何かさ…良い感じの雰囲気でくっ付いてもらいたいよな」
「……あ、だったら…」


茜ちゃんがぽんっと手を叩く。そして、葵ちゃんと水鳥だけに何かを耳打ちした。
それを聞いた二人は、ぱぁっと顔を明るくしてニコニコと笑い始める。…?

首を傾げていた私に、葵ちゃんが近づいてきて、両手をつかまれそのままぎゅっと握られる。


「葵ちゃん…?」
「先輩、私たちに任せてください!」
「名前!予定通り明日の夜に告白決行だ!最高の舞台を作ってやるからさ!」
「え、え…?」
「名前ちゃん、応援してるよ、頑張ろう」
「え…?何をするの?」
「まだ内緒です!」
「そうと決まったら円堂監督と音無先生に許可貰ってこようぜ!」


水鳥の声で、三人は一斉に立ち上がる。
状況が掴めずオロオロしている間に、三人は部屋から出て行ってしまった。

部屋に一人だけ残された私。…え、えーっと…。
とりあえず、先ほどの三人の会話から…明日の夜、予定通り倉間に私の想いを告げる、ことになった。
そして、三人がそれに相応しい舞台を用意…してくれる。


その「舞台」というのが何なのか、少しだけ気になるけど…。でもきっと教えてくれないんだろうな。
…まあどうせ明日には分かるのだろうし…。楽しみに待っていよう。


それにしても、ついに明日…告白、か。
色々と(良い方向に)予定が狂ってしまったけど…。…やっぱりドキドキするのにはかわりない。


「倉間…」



彼の名前を、小さな声で呟く。
それと同時に胸の奥から湧き上がる、熱い想い。…ああ、やっぱり私は倉間が好きだ。





合宿最後の夜まで、あと1日。





20110821




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