「(あああああああああ、どうしようどうしようどうしよう!)」


今日の昼食のオムライスを作るための卵を割りながら、私は自己嫌悪に陥っていた。
何で変なこと聞いちゃったんだろう…!いやいや、まだギリギリ聞いてはいなかったけど…でも、あの態度はあからさますぎたよね…。

も、もし私の気持ち…気付かれてたらどうしよう…!し、しかも今から勉強会だよ?倉間に付きっきりで教えてもらうんだよね…?…う、嬉しいけど、あああああああああどうしようどうしようどうしようどうしようぐしゃ、べちゃ………。


「おい名前!さっきから卵何個落とせば気が済むんだよ!」
「……(どうしようどうしようどうしよう)」
「お、おい…名前?」
「……(どうしようどうしようどうしようどうしようどうしよう)
「おい名前っ!」
「!!え、…あ…な、何?」
「ったく…、何があったんだ?さっきから何度呼びかけても何にも反応しないし…」
「ご、ごめんね…」


下を見ると、無残な姿の卵たち。初めてその存在に気付いた私は、急いで掃除を始めた。真上からは水鳥のため息。
あああ…何だか良いことないなあ…。昨日の前半に良いことがありすぎて、その反動でこんなことになっちゃったのかな…?調子乗ってたのがいけなかったのかな?

時々思うんだ。
神様は絶対に「今はこいつに不幸を与えよう」とか「この間は不幸だったからちょっと幸せを与えるか」とか計算してるんだと思う。
だって、いつも嫌なことがあったら次は嬉しいことが起きるし、嬉しいことが続いたら嫌なことがいきなり現れるんだもん。私だけかもしれないけど!(←ここ重要!)

上手く調節されてると思うけど、でも…。神様の意地悪。倉間関係で不幸なんて止めて欲しい。神様は私と倉間がいい感じになるに反対なの?そうなの?ああああああ、…なーんて、自分の失態を神様のせいにする私。本当にごめんなさい。


落としてしまった卵を片付け終わり、手を洗っていると茜ちゃんがにこにこしながら私の方にやってきた。


「名前ちゃんは、オムライスのご飯はバター味が良いと思う?それともケチャップ味かな?」
「ケチャップがいいな」
「そっか、ありがとう」


私が答えるとルンルンと効果音がつきそうなくらい楽しそうに調理を再開する茜ちゃん。…可愛いなあ。
そういえば、葵ちゃんもとても可愛いし水鳥は綺麗だし…それにくらべて私は…取り絵なんてない、可愛げのかけらもない女だよなー…しかも勉強出来ないし。

一度ネガティブな思考になってしまうと、泥沼に嵌ってしまったかのように嫌な考えが頭の中をぐるぐるぐるぐると回る。
…あー駄目だ駄目だ!ネガティブ担当は鶴ちゃんでしょ?私じゃないの!


と、とにかくだ。
ポジティブにいかないと!ポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブポジティブ…

そう、いつも通りにすればいいんだ。ここで変な態度を取ってしまったらそれこそ怪しまれるというか何というか…。とにかく、いつも通りに振舞え!仕方ないからエロ本のことも水に流してやるよハッハッハ!










オムライスをテーブルに運んでいると、練習を終えた選手たちが入ってきた。
当然倉間も入ってきて、チラチラと私のほうを見ているのがわかる。…いつも通り、何も無かったようにするんだ!

テーブルにオムライスを置き終わり、私自身も食卓に着く。


「いただきまーす!」

隣の浜野が食べ始めたので私もスプーンを手にし、オムライスを一口。うん、美味しい。
すると、浜野が大きなため息をついた。」

「どうしたの」
「いやー、今から勉強会だと思うと憂鬱でさあ…」
「あー…」
「ねえ名前」

浜野に手招かれて彼の方へ身を寄せると、彼は耳打ちしてくる。


「抜け出しちゃわない?」
「…え?」
「だからさ、昼食ったら勉強道具取りに行くふりしてさ、コッソリ昨日の神社に行くっての、どう?」
「ど、どうって言われてもさ…」
「いいじゃん、どうせ名前も勉強なんてしたくないでしょ?だからさ「おい、食事中にイチャイチャしてんじゃねーよ」


いつもより低い倉間の声がして、私は浜野から離れた。


「え?倉間どうしたわけ?」
「…チッ」


倉間は舌打ちをすると、食器を持って立ち上がりそのまま食堂を後にしてしまった。
…あ、あれ…?機嫌悪かったのかな?と、というか勘違い…された?


「おいおい、あからさま過ぎるだろ…」


南沢さんの呟きは、シーンとなった食堂に響きわたった。





20110816




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