(オリキャラ有)



博物館に行ったあの日から、私はあの女の人のことばかりを考えていた。
あれから何度か昼間にお墓に出かけてみたりしたが、毎回無駄足に終わっている。

パスカルが生きていたのは、今から50年ほど前の話だ。しかも、あの写真のパスカルは若かった。…きっと10代後半から20代前半の時に撮られた写真なのだろう。
だけど、それならばおかしい。だって、あの女性はあの写真が本物だとしたら、生きているはずないのだ。もし仮に生きていたとしても、皺皺のおばあちゃんだろう。

だけど違う。あの人は、まだ若いのだ。白い肌に美しい長い髪…。
気になる、気になる。もし、全く違う人物でも、それでも良いから…ただ、あの人と話がしてみたかった。


そこで思いつく。ラントのお墓にいたんだから、ラントの人かもしれない。
うちの家族は、仕事上ラントの住民たちについてよく知っている。もしかしたら、お母さんなら知ってるかもしれない!

私はすぐに台所で料理の支度をしているお母さんのもとへ駆け寄った。
だけど…。



最初こそ、私の話を聞いていたお母さん。だが、その顔が段々と曇り始めた。
その様子を、私は疑問に思い話すのを止めてお母さんを見る。…すると、お母さんは怖い顔で私を見た。


「忘れなさい」
「…え?」
「いいから、さっさと忘れてしまいなさい」
「え、何で…?なんで、忘れないといけないの?」
「いいから忘れなさい!」
「っ…!」


いきなり怒鳴られて、わけが分からなくて…
私は気付いたら外へ飛び出していた。ただただ走って、たどり着いたのはお墓だった。

私は思い出す。ここで、あの人が誰かの名前を呟いたことを。



奥にある大きなお墓。この辺りの美しい風景一体が見渡せる素敵な場所。…領主のお墓の前まで歩く。
そして、墓石を見る。上には、この前あの人が置いたのと同じ、クロソフィの花束が置いてあった。…確か…

私は墓石をなぞって、…見つけた。「ル」で終わる、名前。



「アスベ…ル?」



風が吹いた。










「ルイスルイスルイス!」
「うお、名前!い、いきなり何だよ!」
「あのね、聞きたいことがあるんだけど…」
「聞きたいこと…?」

私は領主邸にお邪魔していた。
私は一般家庭の子だけど、ここの…ラント家の一番下の坊ちゃん…ルイス・ラントとは幼馴染でもある。


「うん、あのね…。ルイスのご先祖さまに「アスベル」って人、いる?」
「え…?アスベル?アスベルなら、あそこの絵の人」

ルイスの指差す方向にあったのは、一枚の絵。逞しい男の人と、青い髪の優しそうな女性、それから二人の小さな男の子がいた。


「あの逞しい男の人?」
「違う違う。あの子供の赤毛の方」
「ふうん」
「で?どうしたのさ」
「…ねえ、ルイスは…紫の髪の長い綺麗な人、知ってる?」
「……」

私がそう聞くと、ルイスの顔から笑顔が消える。
そして、私の手を掴んで自分の部屋まで連れ込む。


「ル、ルイス…?」
「お前、その話…あんますんな」
「え…なんで?」
「…あいつは、嫌われてるんだ」
「え…?」
「あいつ、気味悪いんだよ…。何年も何年も、生き続けて…ラントに居座ってんだよ」
「…」
「だから皆嫌ってる。ラントの人、殆どが嫌ってるんだ。お前も、関わらないほうがいいぞ」



私はラント家から出ると、綺麗に整備された花壇の前に座り込む。…そこには、クロソフィの花が咲いていた。
ルイスに言われた言葉が頭の中をぐるぐると回る。

だけど、私には理解できなかった。
あんなに綺麗な人が、なんで?…話を、してみたい。ルイスには悪いけど、私は…あの人のことが知りたい。





「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -