5月、ゴールデンウィークがやってきた。

今年は5連休だが、サッカー部は練習があるので休みは前半の2日だけだ。もちろんマネージャーも例外ではない。
それと、その練習のある三日間の間に初の練習試合があるそうな。一年生は残念ながら誰も出場はしないけど、先輩たちの試合を楽しみにしていた…が。


「みんな、今回の練習試合…勝敗指示が来た」

キャプテンがみんなを部室に集めて、そう言った。…私は、ついに来たと思った。
今まで謎だった「中学サッカー界の現状」を見ることが出来るのだ。

ふと隣にいる喜多くんを見ると、少しだけ辛そうな顔をしていた。
一ヶ月彼と一緒にいたのだが、彼はとても正義感が強い。こんな…言ってしまえば、八百長試合…許せないだろう。


キャプテンが勝敗指示を伝える。
3対1で天河原中の負け、だった。






「……」


帰り道、あれからずっと喋らない喜多くん。
難しい顔をして、俯いていた。…うーん、どうしたものか。せっかく明日からゴールデンウィークなのにな…あ。


「喜多くん喜多くん」
「…どうした?」
「明日ヒマ?」
「え、明日…?うん、暇だけど…」
「じゃあ遊びに行こう。電車で、遠くの…大きな芝生のある公園に行こう」
「芝生のある公園?」
「昔幼馴染一家とよく遊びにいったんだ。駅とか調べとくからさ、一緒に行ってみない?」
「…そう、だな。たまにはいいかもしれない」


遠出して少しでも楽しい気持ちになってくれたらいいな。
それから芝生公園に行った思い出話を喜多くんにしていたら、駅まで着いてしまった。


「じゃあまた後でメールするね」
「苗字さんの話を聞いていたら、とても興味が沸いたよ。…明日、楽しみにしてるね」
「うん!じゃあまた明日!」


喜多くんと別れると、電車に乗り家まで帰った。
すると、玄関に見慣れないスニーカー。…あれ、もしかして…

急いで靴を脱いでリビングに向かうと、ソファに座ったお母さんと…


「篤志くん!」
「よぉ名前」
「おかえりなさい、遅かったわね」
「ごめんミーティングが長引いちゃって…」
「篤志くん、随分待っていたのよ。お母さん、お茶いれ直してくるから。篤志くん、名前に構ってあげてね」
「ええ、おばさん」

お母さんがいた場所に座り、篤志くんを見る。またセクシー度がアップしたような気がする。


「遅かったな。部活?」
「うん、部活」
「そういえば何部に入ったんだ?」
「あ、篤志くんと一緒のサッカー部だよ?話してなかったっけ?」
「サッカー部だと!?」

篤志くんがいきなり肩を掴んできたので、少しだけビックリする。…?何か問題あるのかな?

「サッカー部に入るなら雷門に来いよ…、いや、それより…サッカー関係者、ってことになるんだよな…」
「どうしたの?篤志くん」
「…フィフスセクターは知ってるよな?」
「あ、…うん」
「…そうか、…」
「篤志くん?どうかした?」
「…いや、何でもないよ。それより、自分からマネやろうとしたのか?」
「ううん、誘われたの」
「はあ?誰に?」
「同じクラスになった子に」
「それって男か?」
「うん、そうだけど…」

そう言うと篤志くんはムッと顔を顰めた。
普段は思ったことをあまり表情に出さない篤志くんだけど、幼馴染の私の前では感情的になってくれる。何だかそれが、嬉しかった。

きっと妹みたいな私がいやな男に引っかからないか心配なのだろう。


「大丈夫だよ、喜多くんはそんな人じゃないから。だから篤志くんが心配しなくても大丈夫」
「え、好きなのか?」
「え?喜多くんのこと…?うん、好きだけど…」
「好き!?」
「喜多くんは大切な友達だから」
「ああ、友達…ね」
「そういえば明日喜多くんと遊びに行くよ」
「何処に」
「芝生公園。あ、場所とか覚えてる?電車で行きたいんだけど…」
「はあ…、後でメールする」

そういうと篤志くんは立ち上がって鞄を持つ。

「名前、明後日空けとけ」
「え?」
「9時に迎えに行くから」

そう言うと篤志くんは出て行ってしまった。入れ替わりでお茶を持ったお母さんが入ってきた。


「あら、篤志くんは?」
「うーん、帰った…のかな?」



20110710



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