天河原中


制服がオシャレだから、という結構てきとうな…いや、かなりテキトウな理由で選んだ、私の新しい舞台。
近くの中学校に行くのを止めたから、今までずっと一緒にいた幼なじみのお兄ちゃんとも離ればなれになったけど…でもまあ、いつでも会えるし別にいいよね。


…それに、天河原中は私の家からちょっと遠い所にあるから、同じ小学校だった子も数人しかいない。
不安だけど、でも楽しみだ。新しい環境で何かに挑戦する…ドキドキが止まらない。これから、どんな出会いが待っているんだろう。




入学式前の待機時間。

体育館前には新入生たちがたくさん集まっていた。同じ小学校出身者が多いのか、グループで談笑している子たちが多かった。何だか話しかけづらいな。…まあ最初はこんなもんか。


先生がクラスごとに整列するよう促す。
自分の出席番号は確認していたので、大体の位置を見つけて並ぶと、オレンジ色の髪の男の子が話しかけてきた。


「君、15番?」
「うん、そうだよ」
「じゃあ俺はここか」

男の子はそう言うと、私の後ろに並んだ。


「なんか入学式前なのに、もう疲れちゃったよ」
「人数が多いから人に酔っちゃうよね」
「しかも知らない子ばかりなんだよ、俺。ついこの間引っ越してきたばかりでさ」
「私も知らない子ばっかり!ちょっと遠くから通ってるから、知り合いいないんだ」
「そうなんだ!じゃあ周りの人を知らない者同士、仲良くしようよ。俺は喜多一番、よろしく」
「私は苗字名前、よろしくね」
「苗字さんね」

喜多くんは優しく笑ってくれた。友達第一号だ。仲良くなれたらいいな。



そろそろ入学式がはじまるので、体育館の中に生徒たちが入っていく。
私と喜多くんも前の人に続いて、中に入った。体育館の中には既に上級生が座っていて、入ってくる新入生をジロジロと見る。見つめちゃいやん。

自分と喜多くんの席は隣同士だった。…なんだか一安心。横の女の子が可愛かったけど、入学式の間緊張しちゃっててずっと喜多くんとしか話せなかった。いや、まあ式の最中に喋り続けるのもどうかと思ったんだけどね、喜多くんとは話が合うんだ。式の最中バレないようにずっとぺらぺらぺらぺら〜…、おかげでかなり仲良くなれた気がする。



入学式が終わって自分のクラスに移動する。なんと偶然、喜多くんと席も隣同士だった。
なんだか仕組まれてるねーと二人で顔を見合わせ笑っていると、先生が入ってきたので話を中断して自分の席についた。


先生の話が終わり、解散になった。配布物も配り終えられ、それらを鞄にしまっていると再び喜多くんに話かけられる。


「苗字さんは何か入る部活は決まってる?」
「私?私は特にまだ…」
「じゃあさ、サッカー部のマネージャーとか…興味ない?」
「サッカー…?」


サッカーか…、確か自分の幼馴染が夢中になっていたよな。…小さい頃は練習に付き合わされてたっけ。なんだかんだいって、サッカーやるの好きだったな。

あの頃は毎日遊んでばかりで、…幼馴染に付き合ってサッカーやったり、幼馴染が自分に付き合ってくれておままごとしたり…何だか、昔の楽しい記憶が蘇ってきた。サッカー部に入部することによって、あの楽しかった頃みたいに過ごせるかな?


「んー、じゃあやってみるよ」
「本当?嬉しいよ、じゃあ早速見学に行かないか?」
「今から?」
「そう、今から!駄目だったら良いんだけど…」
「特に用事もないから行くよ」

そう言うと喜多くんの顔がパアっと輝いた。何だか喜んでもらえて嬉しいな。…喜多くんが一緒なら、3年間楽しく中学生活を送ることが出来る気がするな。うーん、なんにせよ楽しみ!






部室塔へ向かう途中に、喜多くんから天河原中のサッカー部について色々聞いた。
何でも天河原はかなりの名門校らしく、何だか自分の入部理由が恥ずかしくなってきた。それを喜多くんに伝えると、笑って大丈夫だよ、と言ってくれた。


「部に居続けたら段々考えも変わってくるだろうし、大丈夫。それに、サッカーが好きなんだろう?その気持ちさえあれば平気だよ」
「うーん、そうかな?」
「大丈夫。ほら、着いたよ」


喜多くんがドアを開くと…「なっ!ふざけんなよっ!」…?
突然、怒鳴り声が聞こえた。喜多くんと顔を見合わせ、おそるおそる中を覗くと、一人の男の子を囲むようにして制服の人たちが立っていた。体格からして、きっと上級生だろう。

そして先輩たちに囲まれている制服の男の子と目が合った。


「…!」


その瞬間、ギリリと睨まれる。
それが、隼総英聖との最初の出会いだった。



20110710




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