トヨホウス河を渡ってサニイタウンまで向かうことになったので、私たちはティトレイの案内でペトナジャンカの近くにあるトヨホウス河付近までやってきた。

「おお、ここだここだ」
「ググラの河下り便っていうんだ」
「ああ、トヨホウス河といえば、ググラじいさんの河下り便が有名だ。ガジュマが舟を引っ張って操る人力船さ。その技術力は三つ星ってところだな!」

そういうとティトレイは一人で河の近くにいたガジュマのおじいさんのもとへ歩いていく。

「こんちわ!!サニイタウンまで、大人三人、子供三人お願いしたいんだけど」
「待てティトレイ、大人四人だ」
「は?ああ、アニーか!アニーも16歳以上なんだな」
「え、いえ…私は15歳、ですが…」
「私が…17歳だよ」
「えっ!?」

そう言うとユージーン隊長とマオ以外のみんなの顔が驚きに変わる。
あれ、私…そんなに子供っぽいのかな?

「え、嘘だろ?俺てっきり、マオと同い年くらいかと…」
「わ…私年上だと知らなくて…!あ、あの…名前さん、すみません!」
「アニー、呼び捨てのままでいいよ。…隊長…」
「ああ、分かっている。ということで、大人四人、子供二人だ。…大丈夫か?」
「すまんのう。今は舟は出せんのじゃ」

作業をしている手を止め、ググラさんが申し訳なさそうに謝る。理由を聞いてみると、昨日の晩に大嵐が来て、舟が壊れて、部品も流されてしまったらしいのだ。
…それって、もしかして…

「嵐っていえば…」
「サレのフォルスか?」
「…っ」
「それじゃあ、舟はひとつもないのかい?」
「ああ…修理したいんじゃが、近頃は森の中が物騒でな。化け物も出よって木材の調達も安心してできん。まあ、二、三日待ってもらえれば、代わりの舟が届くがの」
「それじゃあ遅すぎるぜ…」
「私が…木材を調達してきます。ご迷惑をおかけしてしまったようで、すみません」
「ちょ、ちょっと名前っ!?」

私を呼び止めるマオの声が聞こえたけど、私は無視して近くにあった森へと走っていく。
…いろんな人に迷惑をかけてる。…ググラさんだって、ティトレイだって、みんな、みんな…ごめんなさい、ごめんなさい…!




「ここにいたのか」


しばらく一人で木材を拾っていると、後ろから声をかけられた。
後ろを振り返ると、ヴェイグさんがいた。…だけど、何だか気まずくて目を逸らしてしまう。

するとヴェイグさんはしゃがみ込んでいた私の隣に、同じようにしゃがみ込んで、私の集めた木材を代わりに持ってくれた。

「あ、あの…」
「気にするな。それに、これくらい集まれば大丈夫だろう」
「え…でも、これだけじゃ足りないと…」
「俺たちもあの後木材を集めていたんだ。お前の分と俺たちの分を足せば、充分だろう」
「…そう、ですか…」
「……あまり、思い悩むな」
「え…?」

そう言われて、ヴェイグさんの方を見ると、彼は優しげに目を細めていた。…こんな表情、はじめてだ…。
そういえば、ティトレイさんに怒られたときも、庇ってくれたな…。最初は、少し冷たいイメージだったんだけど、…優しい人なんだ…。

「お前のせいじゃないだろう。ティトレイのことも、舟のことも」
「…だけど」
「気にするな…というのは無理なことかもしれないが、…もう少し、自分のことを優先に考えたほうがいい、と思う」
「ヴェイグさん…」
「ヴェイグでいい。歳も近いだろう?俺に対して遠慮することはない」
「…ありがとう」
「…ああ。…じゃあそろそろ小屋に戻るぞ」
「小屋?」
「ティトレイが料理を作ってくれるらしい…。…ティトレイ、か…」
「ヴェイグ?」
「いや、なんでもない。じゃあそろそろ行くか。皆心配していた」
「…うん」



「名前っ!」

来た道を戻っていると、マオがきょろきょろと辺りを見回していたので、ヴェイグと一緒に近づくと大きな声で名前を呼ばれた。

「探したんだよ!急にいなくなっちゃうから心配したよっ!」
「ごめんね、マオ…」
「それに…せっかくボクが見つけようと思っていたのに…。ヴェイグに先越されちゃったヨ…」

ヴェイグをじとりと睨むマオがなんだか面白くて。
私は少しだけ笑った。

「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -