「名前、本当に大丈夫?」
「大丈夫だよマオ。どこも怪我してないし、ほら服の下も怪我ないよ」
「わわ、そこまで見せなくてもいいよっ!」
「駄目…だった?」
「いや、あの…そうじゃなくて…」

「あいつは、いつもああなのか?」
「ああ…相変わらずだな、名前は」
「…マオに向ける視線と同じなんだな」
「あいつが小さい頃からずっと見てきたからな」
「…そうか」

私たちはティトレイさんのフォルスの暴走で変わり果てた姿になった製鉄工場の中を歩いていた。
あの時私がティトレイさんや兄さまを止めることができていたら…。そうしたら、誰も悲しむことは無かったのかな?
どうなんだろう…。分からない…分からない。自分で考えたいけど、今までそんなことした事もなかったから…やり方も分からない。兄さまから離れた時は、自分の考えで行動できたはずなのにな…。あの時、どうやって自分で考えることができたんだろう…。


「あ、あの…」
「…」
「あ、あの!」
「…」
「名前、アニーが呼んでるヨ?」
「え、あ…」
「あ…あの…、」
「ごめん、なさい。私を呼んでるって、分からなくて…」
「え、あの…私のほうこそすみません。あ、あの…私、アニー・バースって言います。まだ、きちんと自己紹介していなかったと思って…」

アニー・バース。ピンク色の服を着た、可愛らしい女の子。バース…バースって、ドクター・バースのこと?じゃあ、この子はバースの娘さん…でもバースは亡くなった。…あまりそのことについて話さないほうがいいのかもしれない。だって、ここにはドクターを刺した…
私はユージーン隊長を見る。…彼とドクターはとても仲がよかった。だけど事件は起こった。…どういうことか分からない。兄さまにもその事について考えるなって言われた…し。…いいや、違う。私はもう兄さまの人形じゃないの。自分の考えを…「名前、さん?」!!

「すみま、せん…アニーさん。少しぼーっとしていました」
「そう、ですか…。あ、あの…私のことはアニーでいいです」
「私も…呼び捨てでいいです。あの、敬語も…無しでいい、です」
「じ、じゃあ私も…敬語じゃなくて、大丈夫。その…名前」
「うん…アニー。よろしく」
「よ、よろしく」
「もうーっ!アニーだけズルいっ!」
「?もうマオには敬語じゃないし、呼び捨てだよ?」
「そうじゃなくてっ!」
「ふふっ、なんだか姉弟みたいね」
「なっ!違うヨ!ボクと名前はっ…!」
「姉弟…、違う。マオは、違うよ…アニー」

マオは、違う。大切だけど、「きょうだい」じゃない。私の「きょうだい」は兄さま、だけなの。
兄さま…兄さま、私は…分からない。何が何だか分からない。マオたちについて来て良かったって、思う。だけど、兄さまに背中を押されたとき、ショックだったの。
兄さまは、引き止めてくれると思っていた。でも、あそこで引き止められていたら、私はもっと混乱していただろう。だけど、引き止められなかったのは、ショックだった。私を今までずっと手元に置きたがっていたのに、あの急な態度の変化は一体、なんだったのかな。…分からない、分からない…

「そうだよネ!名前とボクは姉弟じゃないヨ!」
「…うん、きょうだいじゃないよ。でも、マオは大切」
「名前…」
「ふふっ、本当に仲がいいのね」
「おい何か聞こえるぞ」

ヴェイグさんの声で、会話を止める私たち。耳をすますと、唸り声のようなものが聞こえてくる。そして…ここは。

「間違い、ない。ここに、ティトレイさんはいます」

私たちがヒューマの女の子を集めていた部屋、ティトレイさんが暴走をしてしまった、部屋だ。
すかさずマオがフォルスキューブを出すと、異常なくらい回転していた。

「見て、この反応!名前の言う通り、ココにいるはずだヨ!」
「あそこです!」

アニーが指差した先にいたのは、我を失ったティトレイさん。
ヴェイグさんが氷のフォルスを使って、暴走を止めようとするが、駄目だった。暴走をしているティトレイさんは、氷を突き破り、叫んだ。

「姉貴を返せ」と。

私は胸が痛んだ。…私の、せいで…セレーナさんも、ティトレイさんも、みんな傷ついた…私は、私にできることは…ティトレイさんを止めることだ!
武器の爪を取り出し、私はティトレイさんに向き合った。

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