ペトナジャンカへ着いた私たちは、そこでスールズ・ミナールでしたようにヒューマの女の子を集めて、この街で一番大きな建物…製鉄工場に閉じ込めた。
兄さまが女の子を一人一人見ていた時だった。入り口のドアが物凄い音を立てて倒れた。
そこにいたのは、緑色の髪の青年とおじさんだった。

「君たちは誰かな?」
「てめえらこそ誰だ!姉貴や他のみんなを解放しやがれ!」
「姉貴…?」
「ティトレイ!」
「ああ…この人、ねえ」

兄さまが眉をあげる。ティトレイさんの姉という人をを見ると、美しい人だった。…決まってしまった。…だけど…
私はティトレイさんを見る。…この人を連れて行ったら、ティトレイさんは悲しむのかな。…スールズで会った、あの青年のように。
…クレアさんを追って、私たち王の盾の行方を追っていると話に聞いた。マオも、ユージーン隊長も一緒…らしい。そういえば、兄さまが漆黒の翼に渡したものは、どうやら爆弾らしい。…橋が壊されたと聞いた。…マオは、それでも追ってくるのかな。
…これから、マオと敵として戦わなくちゃいけないのかな。…それは、嫌だな…

「わ、私の娘を解放しろぉ!!」
「あなたは確か…ここの工場長でしたね。娘さんとはどなたです?」
「わたし…です」
「…ふーん、そっか」
「そっかじゃねえっ!さっさと解放しやがれ!じゃないと…!」
「じゃないと、どうする?」

トーマ様がティトレイさんの身体を拘束する。当然のようにティトレイさんは暴れたが、ガジュマであるトーマ様には敵わない。

「畜生!放しやがれっ!」
「ティトレイ…!」
「名前、工場長と少しだけ話があるから娘達を見張っておいてよ」
「…了解しました」

兄さまはそういうと、工場長を連れて奥の部屋へ行ってしまった。
私は未だに暴れるティトレイさんを、そして彼のお姉さんを見る。姉弟…、ティトレイさんは自分の好きなようにやっているように見える。…お姉さんが、それを制すことも無い。これが、きょうだいのかたち?本当のきょうだいって、なに?

「お待たせ。名前、娘達を外に出してあげて」
「え…?」
「もう話はついたよ。工場長は自分の娘を選んだ」
「?」
「そこにいる弟くん?連れて行くのは君のお姉さんだから」
「どういうことだっ!」
「工場長と約束したんだ。自分の娘を連れて行かない代わりに、セレーナさんを引き渡すってさ」
「なっ…、どういう意味だ?なあ、工場長!」
「す、すまないティトレイ…」

女の子たちを解放してあげながら、兄さまたちの会話を聞く。…最初から、工場長の娘を連れて行く気なんてなかったはずなのに…どうしてこんなことをするの?
…ティトレイさんの、工場長に裏切られて悲しむ顔が見たかったから?それにしても、…だ。

だが、兄さまがセレーナさんの腕を掴んだところで…ソレは始まった。
工場の床から、突然木のツタが伸びてきたのだ。

「くっ!」
「チッ、フォルス能力者だったか!」
「名前。薙ぎ払うんだ」
「…了解しました」

下で、兵士とトーマ様がツタを切っている。だがあまりにも効率が悪い。…だったら…
私は工場の機材の上に乗り移り、詠唱を開始する。風のフォルスの高まりを感じる。広範囲を攻撃できる技はこれしかない。

「いきます、フィアフルストームっ!」

暴風が吹き荒れる。風の力で切れたツタは瞬く間に地面へと落ちていった。

「よくやったね、名前」
「…」
「姉貴ぃ、姉貴を返せぇえっ!」

すると、ティトレイさんが叫んだ瞬間、物凄い勢いでツタが生えてきた。
それも大量に…!これは、もしかして…

「フォルスの暴走だねえ」
「兄さま、…」
「名前、奴は我を忘れている。樹に覆いつくされる前に脱出しよう」
「ティトレイさんを残して、ですか?」
「当たり前だよ。こうして我を失っている間にね。今なら気づかれずにここから出ることができる」
「…了解、しました」
「ほら、セレーナさん。行きましょう」
「ティトレイ…!」
「早くせんとこいつを今ここで殺してもいいんだぞ」
「っ…!わかり、ました」

トーマ様に脅されて、ティトレイさんを気にしつつ出て行くセレーナさん。
私は部屋から出る前に、もう一度だけ暴走しているティトレイさんを見て、それからすぐに兄さまたちの後を追った。

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