こじゅうろう









「政宗様!今日という今日は逃がしませぬぞ!!」

「Ha!出来るもんならやってみなぁ!!」





今日もまた…奥州、青葉城では足音がドタドタと城内に響き渡っていた


「…よくやるよなぁ…筆頭も小十郎様も」

「お前今日はどっちに賭ける?」

「そりゃあやっぱり筆頭よぉ!」

「いや、そろそろ小十郎様が捕まえてもおかしくねぇぜ?」




家臣達はもう慣れたもので、怒鳴り声を聴きつつ、賭けつつ、時に被害にあいながら暖かく見守っていた












「待ちなされ政宗様っ!」



角を曲がっていく政宗に声を張り上げる









―その時だった。


走っている廊下に面した斜め前の襖が勢いよく開き、何かが飛び出してきた


「!?」


それはパリンと音を立てて砕け散る





…政宗様を見失うのは痛いが…何者かが潜んでいるなら見逃すわけにはいかねぇ


まぁ、どちらにしろ怪しいことに変わりはないので調べざるを得ない



チッ…運が良かったですな政宗様








チャキッと刀の柄に手を添え、飛んできた物体に目をやる



…植物…?

一瞬ランッと目を輝かせたが当初の目的を忘れる小十郎ではない




とりあえず片付けは後に決め、襖の中へと一歩足を踏み出す



「誰かいるのか!」


警戒しつつ声を掛けてみるがやはり返事はない


全神経を耳や目に集中させてもみるが、特に怪しい物もないし音もしない





…逃がした、か…?

だとすれば忍の類だろう
政宗様に報告しておかなければ…


そう思い、部屋の中央まで来ていた小十郎が一歩後退した











「…っ!!」

足に感じた違和感、
畳の合わせ目に乗せていただろう踵(かかと)が窪(くぼ)んだのだ





舌打ちをしながら重心を後ろに持っていかれていた体を立て直しつつ、振り向き様抜刀した小十郎の視界いっぱいに広がったのは






「なっ!?」













…畳。







…顔面バーン!はなんとか免れたが代わりに真っ二つになった下の畳の倒れが速くなりイイ感じに角度を変えたそれが左足の小指に直撃した







「…っ、…!!」




ビリビリッと電流が走り小指を押さえて飛び回りたいのをなんとか抑える


例えひとりでも彼のプライドが許さないのだ











…しかし、表情までは抑えきれなかったらしく、もしも…その場で彼を見た者がいたならこう呟いただろう










まさしく、鬼のようだ。…と



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bkm
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