まさむね


日が昇ってしばらくした奥州の朝、


その部屋は『―スパンッ』と渇いた良い音をたてて開け放たれた。



…その部屋の主はまだ寝ているらしく、もぞもぞと布団の中でうごめいているようだ

ただ、その行動にはきちんと理由がある。
家臣であり右目でもある片倉小十郎の…自分を起こすための怒鳴り声を少しでも小さくする為だ


耳も塞いで準備万端、いつでもきやがれッと身構えていたがなかなか声が聞えない。

……おかしい…

身体を起こして襖を見ればそこにはただただ庭の景色が広がるだけだった


「…Ah?…なんだってんだぁ…?」

拍子抜けして頭をガリガリ掻きながら二度寝する気分でもないので着替えるために立ち上がる

(…小十郎が新しいskillでも身につけたのか…?)

などと考えながら着替えを済ませると聞き慣れた足音が聞こえる。
その足音は徐々に大きくなり…やがて彼の居る部屋の前で止まった。

(そういや開けっ放しだったな…)と小十郎が居るであろう廊下に目をやると、少しびっくりしたような顔の小十郎が立っていた。


「…Ah?どうした小十郎」

「……いえ…珍しく政宗様が起きていらっしゃったものですから…」

「Ha!おめぇが起こしたんだろうが!とぼけてんじゃねぇぞ小十郎?」

「……は?政宗様、なにをおっしゃっておられる?」

怪訝な顔をして眉間に皺を寄せる小十郎

「おめぇが襖開けてその場からいなくなったんだろうがっ…たく、新しいskill身につけやがって…」

「いえ、この小十郎…政宗様の部屋に来たのは本日、今が初めてでございますが…」

より一層眉間の皺を深くして言葉を放つ

その言葉に政宗も眉間に皺を寄せる

「……嘘じゃねえだろうな…」

「はっ。政宗様に嘘を申した事など一度もこざいません」

「………そうか」





敵意があったならその場で叩っ切っているはずだ

それに、仮にも一国の主として知らない気配があれば気付くだろう…




(…じゃあ一体誰が…)



その後しばらく、眉間に皺を寄せたまま見つめ合っている伊達主従がいたとかいないとか…。









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