それにしても無口なひとだったなぁ…
あ、もしかして喋れなかったとか…私なんてことを…
でもなー不可抗力ってやつだよなー…違うか
「…?」
視線を感じて、ふ、と顔を上げれば蘭丸といつきの顔のドアップ
「「ねぇちゃん百面相!」」
びっくりして停止した私を置いて2人はケラケラと笑いながら行ってしまった。
一体どこでそんな言葉を覚えてくるのやら…
「転ばないようにねー!」
駆けていく彼らを見送りながら可愛いなぁなんて思う。
ドアップは軽くホラーだったけど。
あ、ちなみに今は小腹が空いたのでフードコートにきています。
ひとりほのぼのと2人が消えた先を眺めていれば「あれ織田じゃね?」と声が耳に入った。
なんとなく感じ始める視線。
微かに聴こえる嫌な声。
やたらバクバクと響く心臓の音。
昔の記憶が脳裏をよぎる。
このざわめきの中で、
まるで
独り取り残されたような…
「ねぇ、織田さんだよね?」
「!!」
ポンッと肩を叩かれ、急に現実に戻された。
肩に置かれた手が少し重いのは気のせいだろうか
「は、はい…」
「まだ半兵衛くんとは仲良いの?」
小さく返事をすればにこっと笑って聞かれる
「まぁ…」
「ふーん?半兵衛くんも大変ねぇ」
発せられた言葉に黙っていれば少し離れたところで数人、くすくす笑いながらこっちを見ていた
「今度さ、中学のメンバーで集まろうって話が出てるんだけど…よかったら半兵衛くんもどうかなって。あぁ、もちろん織田さんも来てもいいのよ?」
「いや、私は…」
「そう。じゃあ半兵衛くんの連絡先だけ教えてよ」
形式だけの誘いに断りをいれれば、鞄の一番上に置かれていた携帯をひょいっと取られていた
「あ、ちょ…」
「お前ら何してんだよ!」
「きゃっ!?」
蘭丸の声が聞こえたと思えば、彼女の服にオレンジ色の染みが出来ていた
カラカラッと音を出して転がる紙コップ
「なにすんのよ「それはこっちのセリフだべ!人のもんとって…ねぇちゃん苛めんな!丸聞こえだ!」…っ」
「・・・ッ、調子に乗ってんじゃねぇぞガキがっ!」
「へんっ!蘭丸たちは半兵衛からお前らのことイジメていいって言われてるんだからな!筒抜けなんだからな!」
「こらっ!貴様等!楽しい遊園地でなにをしている!悪め!」
胸ぐらの掴み合いになりそうなところで警備員らしき人が叫びながら駆けてくる
「っ、相手にしてられっかよ。行くよ!」
舌打ちと共に彼女たちは人ごみへと紛れて消えていった。
(なんだ、貴様等も悪か!っと貴様は…)
(あ、ども…)
(ねぇちゃん!)
(誰だよこの変態!)
090501
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