「あれ、成実さん?」
「お、おはよー」
店の扉を開ければ、休みのはずの成実さんがガラスケースを拭いていた
「今日、佐助じゃなかったっけ?」
「なんか風邪引いたらしくてさ、代わってやったのー」
「へぇ?」
まぁ、特に心配することもなく、名無しは着替えて作業を始めた。
「あ、あのさ、」
「うん?」
色々と補充していれば成実さんが話しかけてきた
「…いや、やっぱなんでもないや」
「そう?」
なんか言いづらいことでもあるのかな、と思っていれば、また「名無し、」と呼ばれる。
「なに?」
「あー…、やっぱいいや」
またしても途中で止めて、聞こうにも厨房へ引っ込んでしまった
なんか…また来る気がする。
はぁ…と心の中でため息をついて食器を拭いていれば、やっぱり来た。
「あー、」
「ん?」
「やっぱなんでも「いい加減にしないと成実(なるみ)ちゃんって呼ぶよ?」呼び捨てならいいけどそれはヤメテ。」
よしっ、と意を決したように話し出そうとする成実を遮るかのように、カランカランと来店の鐘が響いた。
「いらっしゃいませ…って武田先生?」
なんとバットタイミングとくるりと振り返れば、そこにいらっしゃったのはお館様と愛称がつけられた武田信玄先生。
「すまんのぅ…今日はちと頼み事をしに来たのだが…」
「?」
そう言ってのしのしと成実の前にきて紙袋をトンッとガラスケースの上に置いた
「今日、佐助の見舞いに行くと聞いての…頼まれてくれるか?」
返事さえ聞かず先生は「頼んだぞ」と、うきうきしながら去っていった。
理由を聞けば、家庭訪問になってしまうじゃろ?とか言っていたが、私は知っている。上杉先生と飲みに行くんだ。だって話してたもん
(お願い名無しちゃん!代わって!)
(な、なんで!?)
(時間やばいから小十郎にフルボッコにされちゃう!)
(お見舞いでも!?)
(のは冗談で本当は合コンなんだけどさ!!)
090415