「わぁ…混んできましたねぇ」
久しぶりにマスターの店を訪ねれば、これまためずらしく大繁盛中だった
「そうだな…まったくもって迷惑な話だ」
「え、それは経営者として言っていいんですかね」
「なに、私の店だ。問題ないよ」
…うん。さすがマスター。
てか、本当に混んできてるなと思い席を譲ろうと立ち上がれば、「卿が出て行くことはない」と静止がかかった
「え、でも」
「すぐに片付く」
ふ、と不敵に笑ってパチンと指を鳴らせば、どこからともなく黒い4人組が現れた。
赤茶の髪の色の人が1人と、なんだか怖めの仮面が3人…。
彼らが散れば、瞬く間に店内が動き出した。
「……すご…」
「ふ、こんなのは序の口だ」
カップを拭きながら細く微笑むマスター
「そういえば、営業中にマスターがそこから動いたの見たことないです…」
「あぁ、ないよ」
「ですよねー、そんなことあるわけ…って無いんですか」
「彼らがいるのだ。出る必要がない」
さも当然のように言う
「うぅむ…」
やっぱり特殊なんだろうか…と考えてみるが、人それぞれだよねと思いやめておいた
「久秀様」
「片づきました」
声が聴こえたかと思えば、仮面の2人がいつの間にか後ろに立っていた
残りの2人は厨房で洗い物をしているらしい。
「ごくろう」
マスターが一声掛ければ「はっ!」と返事をした後、視界に入っていたはずなのに気配もなく消えているではないか。
店内を見渡せば店を埋め尽くす程いたお客さんは今はもう2、3人にまで減っていた
(もはや神業)
(そんなことよりも、卿の鞄から見えるプリントによればテストが近いらしいな。こんなところにいるぐらいなのだからさぞかし余裕なのだろうね)
(……て…すと…?)
090316