再び散らばってしまった手紙をしゃがんで集めていれば、一つの影が落ちてきた
「名無し殿?いかがなされた?」
「……真田くん…」
顔を上げれば、キョトンとした真田くん。
…アレ?名前で呼ばれるまで仲良くなった覚えはないんだけどな…
「…なにやら大変なことになっていますな…某もお手伝いいたす!」
…ヤバイッ
パパッと拾い始めた彼に「大丈夫だからっ!」と拾われた手紙を奪おうとすれば、時すでに遅かった…。
引っ張っても抜けないし破けない
あーあ、バレちゃった。
彼らのせいにするのは簡単だけど、私がやられてるのは自分達のせい。なーんて思われたら気分悪いじゃない
私的に、それは彼らと関わってしまう以上にうざい。
だけど…
「名無し殿…、申し訳ない…」
「……」
眉尻を下げて本当に申し訳なさそうな表情の真田さん。
あぁ…謝んないでよ
貴方たちに責任が無い事はわかってるんだから…
…いや、若干一名…
「…よく、耐えてくださった」
そう、優しくかけられた一言に、堪えていたモノが、ふっと軽くなった気がして…
気付けば、ポト…と滴が足下に零れていた
「幸村くぅん、その子なんて放っておいてさ、早く教室行こ?」
「そうだよぅ、そいつ政宗くんとかにも色目使ってさぁ?身の程をわきまえろって感じ?」
今のやり取りに気付いていないのか、少し離れたところに立っていた彼女たちは真田くんの存在に気付き、こっちを嘲るように笑いながら彼の腕を引いていこうとした
それを遮ったのは、いつもならそのまま流されてしまうであろう真田くん本人…
「色目とはなんのことでござろうか?」
腕を引かれてもビクともしない
「え、だって幸村くんみたいなかっこいい人にばっかり言い寄ってるし…ねぇ?」
「そうだよ!幸村くんもみんな騙されてるんだよ!」
思い通りにいかなかったからか少し焦る彼女たち。
妄想もいいところ。
彼女たちは知らないのか…
佐助とか先輩以外とは2、3回くらいしか言葉を交わした事がないことを
「某は、名無し殿とは二回程しか話した記憶はないのだが」
「……ぇ…」
「Ahー…俺もだ。でっち上げも程々にしろよ」
ちょうど登校してきたらしく、ひょっこりと出てきた伊達くんが彼女たちを睨めば、ぐぅの音も出なかったのか彼女たちは憎々しげに私を睨みつけて逃げていった
「つーか、あんな嘘…幸村でも騙されねぇよ」
「む、今のは聞き捨てならんぞ政宗殿」
彼女たちが去った後のそんなやり取りに、私が思わず笑ってしまうのは数秒後の話である
(大丈夫か?)
(あ、はい。……ありがとう…ございます)
(某からも言っておく故、なにかあったら我慢せず頼ってくだされ)
090309