「それじゃあ、また来ますね!」
お店を出ると辺りは茜色に染まっていた
「名無し!」
家へ歩き始めれば名前を呼ばれ、ドンッと背中への衝撃。
「……蘭丸?」
顔だけ振り向けば、そこには前髪をちょんぼにした弟がギューッと抱きついていた
「蘭丸も今帰り?」
「うんっ!名無しも一緒に帰ろう!」
「うん!」
手を繋いで歩き出せば、井戸端会議を開いている主婦業の方々に「仲が良くて羨ましいわぁ…」とか「うちの子達は…」とあちらで捕まり…こちらで捕まり…それをくり返していると、空に星が出て、家に着く頃には街灯に明かりが灯っていた。
「うげっ…なんでいるんだよ!!」
少しよそ見をしていた私がその声に蘭丸の目線を追えば、ちょうど家の前の角から光秀兄ぃが出てきたところだった
「…相変わらず生意気な口をききますね…縫ってしまいましょうか…」
家の前で睨み合う2人いつ見ても仲がいいなぁ…なんて思っていれば、光秀兄ぃが動きを止め、腕を組み片手を顎に当てるとゆう考える人のポーズでジッ…と蘭丸と私の間……あ、手か、繋いだ手を見ていた
「…どうしたの?」
「気味悪ぃな!「こら!」いてっ!」
透かさず減らず口を叩く蘭丸に今度はタイミングを逃さず頭を小突いた
と、光秀兄ぃが口を開く
「……蘭丸…シスコンもいいですが、街中で手を繋ぐのは彼女とかにしなさい。もうすぐ中学生でしょう?名無しが街中の男共に誤解されてしまいます」
……誤解ってなんだ?
「へんっ!光秀には関係ないだろ!行こう!」
手を引っ張られ「ただいまー」っと、玄関へ入れば後ろから「お邪魔します」と聞こえ、前からは母の「おかえりなさい」と「いらっしゃい」の声が聞こえた
「なんでお前も入ってくるんだよ!」
「招かれたからに決まっているじゃないですか」
「お前なんか招いてない!」
「えぇ、あなたに招かれた覚えはありませんね…」
「か「帰れと言うなら名無しを連れて帰りますが」なんでだよっ!」
「…とりあえず蘭丸君も光秀も移動しなさい。名無しが動けないでしょう」
玄関で言い合いを始めた2人に挟まれて動けなくなった私を見かねて母が助け舟を出してくれた
……お母さん…ありがとう…
(やっぱりこの年で手ぇ繋ぐの変?)
(…いや、良いんじゃないですか?)
(さっきと言ってること違うじゃないかっ!)
(考えたら虫除けになりますからね…)
(虫除け?)
090223