――ドンッ
「わっ!?」
商店街を1人でぶらりと歩いているとガラの悪っそうな2人組とぶつかった…いや、奴らが、ぶつかってきた…はず
…てか、前にもこんなことあった気がする
「いってぇなぁ〜…」
「気ィつけろこのアマ!」
1人がアイタタタタッとわざとらしくぶつかった箇所を押さえれば、もう1人がここぞとばかりに怒鳴ってきた
(う〜ん、避けたと思ったんだけどなぁ…)
こいつらが2人してふんぞり返って歩いてたのが悪いよね。ぶっちゃけ何十年前の手口だよと思いながら、とりあえず騒ぎを大きくしたくないので「すんません」と謝っておく。
そこで終わるかなぁ…なんて淡い期待をしていたのだがやはりそんな甘くはなかった。
「お〜?姉ちゃん、よく見りゃ可愛い顔してんじゃん」
……はい?中の下ですがなにか?
え?なに?このマンガみたいな…王道パターンってゆうの?
私がポカンとして動かないのをいいことに2人はジロジロニヤニヤしながら物色するみたいに見てくる
(どうしよう、キモい…)
ふっと周りに視線を送れば通り過ぎる人は見て見ぬふり、遠目から見てる野次馬は好奇心だけで助けてくれる気はないようだ
あぁ…いつからこんなに冷たい世の中になったんだろう…
「ねぇねぇ、そんな黙ってないでさ〜、ぶつかったお詫びにちょっとつき合ってよー…あ、もしかして照れてる?」
なんとゆうポジティブ。
「え、いや、用事が「そんなつれないこと言わないでさぁー?」
(いやいや、これからバイトやがな)
どうにも逃げられそうにないこの状態がもどかしく、この時代にまだこんな奴がいるのか…と呆れながら、私は、なんとも言えないため息をついた
「んじゃ、立ち話もなんだし、行こうか」
胸っ糞悪い笑みを浮かべている1人に腕を引っ張られる。
踏ん張ってみるものの、勝てるはずもなく、男の胸にLet'sダイブ!を覚悟して私はギュッと目を瞑った。
(…助けてお父さんっ!)
一瞬の浮遊感。
けれど、予想とは違って私は後ろにグイッと引っ張られ、身体ごとなにかに包まれた。
それが人だと気付いたのはすぐだったけど
その人は私を抱き寄せている腕とは反対の腕で相手の男の腕を掴んでいて、その場にはピリピリとした一触即発の空気が漂った。
「あ゙ぁ゙?ンだテメー…この西高の藻武に逆らおうってのか?」
「は?モブなんて知らねえなぁ…おめぇこそ、ここが鬼の…長宗我部元親の縄張りだとわかっててやってんのか?この田舎もんがよぉ…」
睨み合っている2人。
相手は「知るかよ」とばかりに鼻で笑って「なぁ?」と相方を見た。
…が、相方は真っ青で、しかもなんかぶつぶつ呟いている。
正直、別の意味で怖い
「ちょうそなんとかっつー無駄に長い名前…左目の眼帯…間違いねぇ…」
「どうしたんだよ…?」
「こいつ、婆沙羅学園の鬼だ!」
様子のおかしい相方に、モブとか名乗った奴が声をかければ、その相方はいきなり叫んだ。
「…マジで?」
「あぁ…」
「どうするよ?」
「逃げるっきゃなくね?」
「やっぱ?」
「じゃあ、1、2の3の3でダッシュな」
「おぅ、よし行くぞ」
「1、」
「2の」
「「3!!」」
婆沙羅学園の鬼…その肩書きには覚えがあったらしく、そんなやりとりが聞こえたかと思うと、2人組はダッッと陸上部員顔負けだと…素人でも分かるとても綺麗なフォームで私たちに背を向け超ダッシュしていった。
そりゃもう、オリ○ピック選手も驚いてしまいそうな速さで
奴ら、絶対二人三脚の世界大会があったら…ぶっちぎりで1位になれるよ…
プロだよ…
しかし、そこは鬼さん。
みすみす逃がす気など無いらしい。
「逃がすかってんだ!追え!野郎ども!」
「「イエッサー!アニキィー!!」」
彼が叫ぶとどこからともなく現れたガラの悪そうなチンピラ達が生暖かい視線をこちらに向けた後、2人を追いかけ走っていった。
(名無し大丈夫だったか?)
(あ、はい。ありがとうございました)
(ヒュー♪彼女助けるなんて兄ちゃんやるねぇ!)
(…っるせぇ!彼女じゃねえ!後輩だっ)
((顔赤いよ元親先輩…))
090219
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